鑑定人と顔のない依頼人

あらすじ:超一流の美術鑑定人であるヴァージル・オールドマンは、両親の残した美術品を鑑定して欲しいと依頼の電話を受ける。向かった先では、古びた洋館の中に数多くの美術品が眠っており彼は依頼を受けようと依頼人と面談を取ろうとするのだが、依頼人は事あるごとに言い訳を作り彼との面談を反故にする。依頼人の無礼な態度に業を煮やした鑑定士は依頼人を問い詰めると、意外な答えが返ってくるのだった。
予告編

感想:
ニューシネマパラダイス海の上のピアニストの監督であるジュゼッペ・トルナトーレが監督・脚本を担当したミステリー映画。
美術品以外に興味を持たない厳格が足をつけて歩いているような性格の主人公ヴァージル・オールドマンは妻子を持たずに一人で老年を迎えていた。そこに若い女からの電話の依頼が舞い込む、姿を現さない彼女の不思議な行動に興味を抱いた主人公は彼女を審美(鑑定)しようと彼女の周りを探り始めるのだが、彼女の生い立ちや奇妙な生活を知るにつれ魅力の虜となっていく。とまぁ、映画全体の音楽やビジュアルは往年の名画を見ているような雰囲気で凄く落ち着いてゆったりと見れるので大満足だったが、その流れを切り裂くような終盤はいささかオチが弱い気がした。テーブルで誰かを待つラストシーンは良かったんだけど、トリックの種明かしが実に陳腐というか。
中学生が考えそうな「引きこもりの美少女ラノベ作家と出会った俺は彼女のワガママを聞いていくうちに心が通じ合い・・・」という電撃大賞に応募したら一次で落選しそうなネタに引っかかる主人公が哀れすぎた。名画のような高級感のあった世界が、その種明かしで、一人身のおっさんサラリーマンがフィリピンパブで知り合った女の子に結婚資金として会社の金を横領して貢いだら彼女がフィリピンに帰ってしまい逮捕されるような、どーしょーもないワイドショーの定番ネタに堕ちてしまったのが実に残念だった。もうちょい悪巧みが巧妙だったり主人公からの反撃があれば見ごたえがあっただろうに。
悪い映画ではなかったが後味があまりよろしくない。

余談1
邦題が挑戦的なので、身構えて全てを疑ってみると早々にオチに気づいていしまう人や、なんだこんなネタなのかと肩透かしを食らってしまう人もいるだろうから、まぁ邦題にも問題があるといえばあるよね。

余談2
「伝説の自動人形を再生できれば、何でも答えてくれるトリックがわかるよ」
「どうせ、中に人がいたんだろ」
「書物には、自動人形はどんな質問にも正解を答えてくれたらしいぞ。そんなこと人間に出来るかよ」
完成間際
「やっぱり、この台座の下に人が入っていたのさ」
「なんだ」
という自動人形の製作を通して、物語のテーマをうっすらと紹介する流れ好き。

鑑定士と顔のない依頼人 [DVD]

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