TOKYO TRIBE

あらすじ:架空の町トーキョーでは、若者たちが各々の主義によって少数の集団(トライブ)を組んで暮らしていた。暴力によってトーキョー制覇を企むトライブもあれば平和を歌うトライブもあり、平和には程遠い状態であったが全てのトライブが他を牽制するのみで際立った争いは起きずにいたのだが。そんな火薬庫のような町に一人の少女が迷い込んだことによって世界が更なる混沌へと陥る。
予告編↓

感想:
「どうかDJは殴らないで下さい」
西部時代の酒場では、頻繁に銃撃戦が起きていたために予期せぬ犠牲者としてコックやバーテンが死んでいったという。コックやバーテンなら補充はたやすいが酒場を盛り上げるピアニストに関してはそう簡単には補填が出来なかったので、昔の酒場には「どうかピアニストは撃たないで下さい」という貼り紙を出していた。と寺山修司の本に書いてあったが、この映画では如何なる暴力が起きようともリズムを止める事は物語を止めることになるので町中に「どうかDJは殴らないで下さい」という貼り紙があったに違いない。


12年前くらいに原作を読んでいて、監督があの園子温ときいて視聴した。
監督が監督なので、また俳優が血の池を泳いだりするのだろうと食事を事前に済ませて視聴したが、目を背けたくなるようなグロシーンは無かったぜ!*1
グロシーンよりも、始まった瞬間から目の前に広がる夜の東南アジアの路地裏のような人とゴミとネオンが混ざり合った「これぞ世紀末!!」といった世界観*2と露天のおばあちゃんDJがスピンする音楽から始まるストーリーテラー役のショウ(染谷将太)のラップに心が鷲づかみにされた。*3
染谷ラップによってこの映画の肝であるラップ+ミュージカル=HIPHOPミュージカル((予告ではバトル・ラップ・ミュージカルと言っている))が始まる。
ショウと池袋を仕切るトライブ「ブクロWU-RONZ」のリーダーメラのラップによって各トライブの特性や舞台の説明が行われる。トライブごとにラップのスタイルが違うのがカッコいい。シンジュクHANDSのラップに園監督の作品「冷たい熱帯魚」の言葉と入っているのもイイ。BUKKOROSU!*4
メラはカイのいる「ムサシノSARU」に怒りを燃やしている。*5
シンジュクHANDSに新しいボスが誕生してトーキョーの勢力図が変化するという話が流れるが、結局どうでもよくなるので気にするな。
問題はブクロWU-RONZを裏で操る暴力団仏波一家が町で謎の少女スンミを拉致る事から始まる。
夢の島のような荒れ果てた町から一転して贅の限りを尽くした豪邸に住むブッパ。家の前に回転する地球儀に「FUCK DA WORLD」って描かれたものがあるんだけど、あれスカーフェイスの豪邸にある「The World is Yours」の地球儀のオマージュなんだろう。
ヤクザのボス、ブッパを演じているのは竹内力でビジュアル的には100%合格なのに竹内力が出演者上最高にラップが下手なのが実に辛く面白い。本人が凄く頑張っているのにしゃっくりが止まらないようなラップで笑える。
真っ赤な部屋で人間を家具にして暮らすブッパの息子「ンコイ」。窪塚洋介が演じているんだけど、渋谷のカラーギャングをテーマにしたIWGPカラーギャングのリーダーだった男が数十年後にヤクザの息子として登場しているのは個人的に凄くうれしかった。
青いライトに照らされた薄暗い部屋ではブッパの部下であるメラが住んでいる。寒そう。
ブッパの妻として叶美香が登場する。凄いおっぱいで竹内力にモミモミされているシーンでは、意外に柔らかそうだった。もっと硬い印象があったのに。
召使というかメイドとしてサイボーグかおりがヒューマンビートボックスをしながら登場するんだけど、滑っていた感ある。突然すぎでしょ。
ブッパによる拉致った女達の選別が始まるが、隙を突きスンミのアクションが炸裂する。実に良い暴力。愛のむきだしで大立ち回りした満島ひかりを彷彿させるアクションとパンチラ(チラってレベルじゃないんだけど)。竹内力ヤクザキックを腹に食らうシーンはさすがに痛そうだった。
用心棒にプロレスラーの高山善廣が出てくる。台詞は少ないものの、そのビジュアルでおいしい立ち振る舞いをしていた。
メラは部下を使ってムサシノSARUのメンバーをブクロに誘う込み、そいつを山車にカイをおびき寄せる計画を立てる。作戦通りに仲間を助けようとブクロに乗り込むカイとテラ。メラの凶刃によってテラは命を落とす。テラは佐藤隆太が演じているが雰囲気ビジュアルともに凄く似ている。ハシームも似ているが書記長は無理やり似せている感ある。そもそもちょい役すぎる。原作ではもっと前に出ていたのに。
SAGAハウスの廊下が、壁に風船がいっぱい貼り付けてあるのかと思ったらその風船一つ一つに乳首が付いていておっぱい壁になっているのは凄くくだらなくて良かった。だって夢のおっぱいの壁だぜ(お、おう・・)
その頃、ブッパの元にきた中国から来た使者によってスンミがウォンコンを支配する大司祭の孫だと判明する。
ここからスンミをめぐってトーキョー中が動き出す。中国から来た刺客の二人組は、邪魔するものを敵味方関係なく全てなぎ払い。メラは全てのトライブを滅ぼす為に親衛隊のWARUを動かし始める。メラの為に自分の命すら捨てる危険な奴等に各トライブは痛手を負う。カイは今こそトーキョー中のトライブが手を組む時だと動き出す。*6
トライブ連合VS.WARU+仏波一家の争いの戦いが始まるのだった。
朝焼けとともにブッパ邸に乗り込むトライブ連合。*7
大勢の若者が殴りあい殺し合いを始める戦場。混戦を極めるなかでカイとメラは対面する。(中川翔子キルビルとかダイソンキラーとか、面白いというよりも唐突すぎ。絶対にその場で思いついただろ)
舞台は場外に移り、ンコイの「眠い、眠いぞ・・・おい、誰か音楽かけろ!」で巨大スピーカーから音楽が炸裂する。ラップをしながら戦うンコイとショウ。(このシーン好き。それまでのただのアクションシーンが一掃されてHIPHOPミュージカルに戻った感じがして)この後のカイの「曲かけろ!」も好き。これだけ乱戦状態なのに誰もDJを襲わないシーンは冒頭に書いた「どうかDJは殴らないで下さい」を体現しているみたいだった。
カイとメラの戦いに周囲が争いを止めて注視する。
メラの気が狂ったようなラップとアクションは最高。物語全体的にカイよりもメラが多く写っているから、カイの声は正しいんだけど裏づけがなく薄っぺらいんだよなー。(テラとカイのシーンをもうちょい入ってれば良かったかも)
メラをぶっとばしたカイは団結した仲間の前で勝利のラップを決め、仲間がマイクリレーで繋げる。
終わり。

原作の雰囲気だけ抜き取って上手いところ2時間でまとめてくれていてラップミュージカルという斬新な演出で食べ応えがたくさんあったんだけど。物語の端々がいい加減すぎて、良い点をあげればいっぱいあるが無いものねだり的に悪い点も目立つのがもったいなかった。
でも、邦画でこの勢いを出せる監督なんて日本で数人しかいないので園監督は是非このまま適当に見る人間を驚かせるエンターテイメント映画を作り続けてくれれば私的に満足です。

TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ [Blu-ray]

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*1:部位欠損とか人食シーンとは、もう慣れた

*2:クローズの落書きだらけの学校。ブレードランナーぽい

*3:園子温は染谷が本当にお気に入りなんだな

*4:露天売りでYOUTHEROCKが出ているよ

*5:理由は最後に分かるが凄いどうでもいい理由だった。原作ではメラって大人の余裕があって、ブッパへの復讐が目的だったのに全くの別人である

*6:ここら辺から、サイボーグかおりが退場して中川翔子が現れる。中川翔子の必要さが最後まで分からなかった。そもそもこの映画って時間が経つごとにドンドンその場その場で思いついた事を突っ込んでいったような適当さが目立つ

*7:大勢が戦いに挑むがハシームと書記長は高台で旗を振るだけ。ミュージカルぽいと言えばぽけど・・・