女性恐怖症。

「はぁ〜あ、ただいま」
kobachiは溜息を付きながら脱いだヘルメットを靴箱の上に置くと自室に入った。
「お帰り。今日は早いんだね」
ビオラんテは読みかけていた本を閉じるとKobachiの方に顔を向け微笑んだ。
「まぁ、午前だけの授業だからね。お前それ俺の本……」
「あぁ、暇だったから読んでた。太田光のパラレルな世紀への跳躍ってこの本だとなんか思想的な事が多く書かれるようになって、つまんないね」
「あ、うん。この本は失敗した。爆笑問題が著者名義になっていた作品の方が良かった」
「そうだね、三三七拍子や天下向こう見ず、ヒレハレ草の方が面白いよね。そういえば、kobachiさん、手ぶらみたいだけど今日はジッパーの壊れたデニムの代わりを買いに行ったんじゃないの?」
kobachiは溜息を付きながら鞄を降ろした。
「まぁまぁビオラんテ。ちょっと立ち上がって俺の前に立って俺の足のつま先をみてごらん」
ビオラんテは不思議そうな顔をしてkobachiの前に立つとアゴを下げつま先を見る。kobachiの前にビオラんテのつむじが見えた。
kobachiは大きく右手を空に掲げると勢いよくビオラんての頭部めがけて振り下ろす。
パチンと乾いた音が部屋に木霊した。
「い、痛い。なにすんの?」
ビオラんテは頭を抱えながらkobachiを睨み言った。
「買ってねーよ。服屋に行ったら、なんだかおしゃれムードがガンガンに渦巻いていたから、早々に帰ってきたよ。あんな店一生行かねぇ」
「また、その病気。これで、一人で行けない店がまた増えたの。もう、マクド吉野家すき屋も行けなくなって、終いには服屋にまで行けないの?」
「ちげーよ、あの店がいけなかったんだよ。明日は違う店に行って買うよ」
「とかなんとか言って。どうせ、店員が女性の可愛い人でその人に「裾上げをお願いします」を言う勇気が無かったんでしょ」
ビオラんテはほくそ笑みながら椅子に座り直す。
「な、なに言ってんだよ。俺がいつそんな弱腰に……」
「ほんとに?じゃあ、昔コンビニにカレーパンを行った時、パンの棚をたまたま女子高生のバイトが棚の陳列を直していてカレーパンが取れなかった時、うろうろしてバイトがその場を退くのを待った結果、最終的にうぐいすパンを買って帰って来た事知ってるんだよ」
「それは……」
kobachiの声をかき消すようにビオラんテが話し出した。
「なに?それはって。kobachiさんうぐいすパン嫌いだったよね、食べたかったわけないよね」
kobachiを挙動不審になりながら頬を掻き、言葉を選ぶように右上を向いて答えた。
「あ、うぅ、好き嫌いを……直そうと……」
「じゃあ、今ならうぐいすパン食べれる?」
ビオラんテは困った顔をしたkobachiを面白がるように上目使いに見るとニヤっと笑う。
「えぇ、あぁ……。もう、もう…」
「何?聞こえないんだけど」
「も、もう……いやだーーーーーー」
kobachiはビオラんテのプレッシャーに負けると、部屋を飛び出し玄関に出てどこか遠くに走っていった。
「あはははは(笑)kobachiさん。あなたは所詮は女性恐怖症の負け犬なのよ、いい気味だわ」
kobachiの部屋からはいつまでもビオラんテの高笑いが聞こえましたとさ。
めでたしめでたし。





ですか?

パラレルな世紀への跳躍

パラレルな世紀への跳躍