嘘あらすじ④


エントリーナンバー26
作品名 正月ホットドック
作家名 瀬尾ゆう
あらすじ

小さい頃からシスコンのお姉ちゃんは、何かと私に纏わり付くので、ウざったくて嫌気がさした私は「ちょっと買い物に行ってきてーな」とお願いした所、まるで散歩に連れて行ってもらえる犬のように「うんうん、直ぐに行ってくるね」っと見えない仮想の尾っぽをフリフリ振って出ていた。
それ以来、お姉ちゃんは帰ってこなかった。
私は失踪した姉と同じ年齢になった。犬を飼った。犬は亡くなった。誰かに燃やされた。

エントリーナンバー27
作品名 その椅子の名はBENCH
作家名 遊輝本知之
あらすじ

赤星忠司の家の前には、公園がありその中心にはコカコーラの絵が書かれたプラスティック製のベンチがある。赤星忠司は二階の窓からそのベンチに座る人を見下ろすことが日課になりつつあった。赤星は何事にも悲観的で怠惰的、何処で誰が泣いても笑っても死んでも生きても殺しても対岸の火事のように気にしない。無関係を装い傍観者を決め込む。だが忘れていた。火の粉は飛んで来るのだ。否が応でも。


エントリーナンバー28
作品名 あおいゼリー
作家名 佐久間あき
あらすじ

リストラにあった父が酒に溺れた、何事も完璧主義の父は自己のクビという汚点が赦せなかったらしく現実と向き合うことを諦め酒に呑まれた。そんな父が癇癪を起こしウイスキーの空き瓶で私を殴った、自己防衛という大義名分で隠した殺意を込めわき腹を何度も突き刺してやった。返り血で真っ赤に染まった制服のまま家を出た時、空の青さに涙が止まらなかった。こんなに世界が明るくて前向きなのに私はなんて事をしてしまったのだろうと。

エントリーナンバー29
作品名 世界人類が平和でありますように  
作家名 峯尾耕平
あらすじ

近所に住む古川美咲は、幼くして運と才能を使い願う夢を着実に叶えていった。幼少時から女優に憧れていた美咲は母親のツテで劇団に入る。そこで某TVプロデューサーみ認められてTVドラマに。数年したある日、右手に腫瘍が見つかり、苦渋の決断の末右手を切断。それに伴い女優業を引退。声優として現在至る。私はそんな美咲が嫌いだ。順風満帆で苦労知らずのそのあっけらかんとした笑顔に虫酸が走る。殺したいと思う。だって、私はこんなにも惨めなのに。