ドナドナな私と夜の街

皆さん、お久しぶりです。
今、私はとある惣菜屋さんの一室からこの文章を打っています。私がこの場所にたどり着いた経緯から話していきたいと思います。前回、kobachiさんと大喧嘩した末、私は家を出ました。家を出たとて、行く宛などない私、夜道は私から体温を奪うように纏わり付きました。寂しさを紛らわす為に人気の多い居場所と歩むうちに気付けば駅前に居ました。煌びやかなネオンが彩る駅前。いつの間にか大きな駅ビルが羅列し、夜だというのに行き交う人は多く、その人達を迎えようとする車も多かったです。私はその時、少し期待していたのです。この人ごみの中で彼はきっと私を探しに来てくれることを。私は待ちました。夜の闇が次第にネオンの灯火をかき消し、闇を恐れるように人々はいなくなっても待ちました。彼は迎えに来ません。その場に蹲った私は、きっと普通の人間ならこんば場合、悲しくて泣いたり、来ない彼に対して怒りを覚えたりするのでしょう。しかし、その時の私はなんの感情も湧きませんでした。虚無と言うのでしょうか、それはまるでビルとビルの間に微かに見える夜空のように漆黒でした。やはり、私は人間ではない。そんな確信のみが心中を渦巻いていました。
そんな私の肩を誰かが叩きました。私はその時、彼が着てくれたのだと顔を上げましたが、そこに居たのは、小脇にダンボールを抱え汚らしい格好をした俗に言うホームレスのおじさんでした。おじさんは吃音なのでしょうか。どもりながらガムでも噛んでいるのか口をクチャクチャ言わせて喋りかけてきました。
「じょう……、い……いっ、…これ……で、」
首を傾げる私に、おじさんはポケットから皺くちゃになった5千円を取り出し見せ付けてきます。
あぁ、そう言う事ですか。
私は怖くなってその場から逃げ出しました。走りながら後ろを振り返るとおじさんは尻餅をついて私の方を見ていました。その眼はまるで私も同類とも言いたげで。
息を切らせて立ち止まった場所はシャッターの締め切った商店街。
端に設置されているベンチに座り、頬を指で拭いましたが汗のみで涙は出来ていません。所詮、私なんてそんなもんです。期待しても裏切られる。
ベンチに座り、早く夜が明けるのを待ちました。なんだか今日は人に合いたくありません。一人がいいんです、彼も口すっぱく言ってました「一人が最高だ。一人だから辛い。でも、大勢の中で孤独感じるよりは何倍もマシだ」
私は、くしゃみをするように両手で口を押さえて彼の言葉を言ってみました。
少し気が楽になったような気がしました。そうです、一人だから強くなれる!
ふつふつと溢れる勇気に私は拳を握り締め、のんきに歩く猫を満面の笑みを送りました。猫はそんな私が何か餌を持っていると勘違いしたのでしょうか、擦り寄ってきます。
思えば、私もお腹が空きました。
中国人は足のあるものなら椅子以外は何でも食べると彼から聞きましたが、その猫も食べるのでしょうか、私は猫をひょいっと拾い上げて膝の上に乗せました。
可愛らしい。こんな可愛らしい下等動物食べられません。きっと猫を人口と同じくらい地球上で飼育すれば、誰もが猫の可愛さで戦争を起こす事を辞めるのではないでしょうか。
猫の背を撫でながら私は思いました。
あなたと一人一匹で生きていこう。



おっと、お父さんからお呼びがかかりました。
きっと晩酌ですね。
今日はここまでにします。続きは次回まで。