青酸クリームソーダ〈鏡家サーガ〉入門編

壮大に矮小で、陳腐でディープな七兄弟が織り成す。確実に狂っていて完璧に壊れている物語。
鏡家サーガ
その「入門編」と銘打って発表された『青酸クリームソーダ』を読了。


あらすじ:時は2006年、場所は北海道の田舎町。夜道をふらつく「鏡公彦」は竹やりで人を突き殺す少女「灰掛めじか」と出会う。めじかはそんな公彦に「責任をとって」と襲いかかって来るのだった。


感想(確実にネタバレ):
鏡家サーガもこれで5作目。
最初はあまりの気持ち悪さに読後、「きめぇ、こんな発想する佐藤友哉は絶対に友達になりたくないし、俺に独裁者スイッチがあったらまず押す」と散々な文句を言っていたが。今では、すっかりその気持ち悪さにも慣れてしまって、今作も「2008年に、21世紀に、吸血鬼オチ? ふざけんな!! 吸血鬼が登場していいのは小学生向けの児童書までだろ!! 全く、いい年の大人が吸血鬼なんて……あっ、化物語……。ともかく、犯人は吸血鬼でした。は、ねぇだろ!!」と愛のあるダメだしをしてしまったり。「初瀬川研究所の科学力は世界一ィィィィ」に、もはや、勝手にやってろ!! というしかありませんでした。


そんな文句は置いておいて、
毎度主人公は兄弟の誰に変わることがテーマのこのシリーズ。
第一作が三男の鏡公彦、二作が次女の鏡稜子 、三作目に次男の鏡創士、四作目は三女鏡佐奈四女鏡那緒美。そうなると、今度の5作目は長男の鏡潤一郎が現れるかと期待してましたが、主人公は公彦のまま。初登場の潤一郎は『安楽椅子探偵』という微妙なポジション。私は口調から連想した人物が絶望先生になってしまう。いつ、潤一郎の口から「絶望した!!」と出るのかが気がかりでした。(まぁ、性格上まず発しない言葉であるけど)次女の稜子も適当な予言を行い、暴力要素が薄い公彦をパワーで助ける助手的な役割でした。
いつもどおりの佐藤友哉の「歪んで壊れている家族愛」が描かれており、そこら辺は「鏡家サーガ」ファンは安心して読めるのですが、入門編というサブタイトルにはいささか……。
確かにストーリーは作品の紹介を秘めているけど。他の作品を連想させるキーワードを入れすぎていて、初読者の方は正直どれがこのストーリーの伏線で、どれが他の作品のネタなのか分からなくなってしまうんじゃないのでしょうか。
まぁ、全部読んでいる人からすれば、公彦と創士の電話シーンや稜子の高校時代の話とか、長女の話なんかはもうウハウハで面白いですがね。



後は、いつも通りのこの言葉で締めます「気持ち悪い作品だなぁ(最大限の賞賛と最大級の拍手を込めて)」

ファウスト Vol.7 (2008 SUMMER) (7) (講談社MOOK) (講談社 Mook)

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