ウィワクシアの読書感想文/佐藤友哉

あらすじ:(自称)外見も醜く運動音痴で勉強も出来ない。友達もいない主人公の「僕」は自分の半生を振り返りながら、苦悩に包まれ転げ落ちた世界を語る。


感想(ネタバレ);佐藤友哉の過去作『1000の小説とバックベアード』において、「どんなにふざけた小説を書いても文学は揺るがない。何故なら、この世で文学を成り立たせている小説は世界に1000個しかなく、今後どのような事があってそれは変わらない。だから、お前達アマチュア小説家は思う存分適当に書いてくれて構わない」と言った宣言をしていた事に対して、この小説では、「物語(小説)は、いろいろな物語が日々切磋琢磨していて、進化退化・誕生から絶滅まで行われている。だから、今の物語の形がいつまでも続く訳じゃない!(いつか俺の時代が来る)」と言った感じになっていた。
前作と今作で作者に何がどう変わったのか分からないが。「みんな、もっと勝手に小説を書けよー」から、「西尾維新の腕を折って、治療期間中に俺のブームくるんじゃね。あんなにでかい恐竜だって絶滅して、ネズミが生き残った訳だし。まぁ、そんな戦いの中に全く進化も退化もせずに生き残っている舞城はさながらゴキブリって感じか。くは〜。」と随分攻撃的になった佐藤友哉の作品でした。
ネットで書評を観たら、佐藤友哉版「人間失格」と書いている人もいたけど、この作品の主人公って、一度も他者から良くも悪くも評価されていないくせに、自己評価が最低な事を考えるに、人間失格のような感じには思えなかった。
「良い事がある」→「嬉しい」→「少し悪い事が起こる」→「やっぱ俺は最低についてなくて人間の屑だ('A`)」という流れがあれば、もっと面白かったような気がするぜ。彼女が知り合いと付き合っているという事実をもっとどうしようもないタイミングに主人公に教えるとかさ。過去を振り返っているのだから、テンションが均一なのは当たり前だけど。そのせいで、「僕」に人間味が感じられなかった。だから、感情移入は出来なかった。精神鑑定に持ち込みたい犯罪者の言い訳としてしか感じられない。



余談、
たぶん、秋葉原の事件とか、光市母子殺害事件を倣った小説なんだろうなぁー。
鏡家サーガもどうしようもなかったけど、アレにはユーモアがあるから面白いんだよなぁー。
こっちはもうダメダメだと思います。