葉桜の季節に君を想うということ

あらすじ:「なんでもやってやろう屋」を経営する成瀬将虎は知人から悪徳商法を行う蓬莱倶楽部を調査して欲しいと言われる。その帰り道、駅のホームで飛び込み自殺を図ろうとする麻宮さくらを救うのであった。



感想:
大・満・足です!!
最後のどんでん返しには「確かにお前は主人公がアレだとは言ってないよな!!………でもさッ」と言いたくなる気持ちが残るものの、全ての伏線が脳内で組み合わされるあの高揚感は最高。
一人称の文章は読みやすく小説自体は長編なのですが短く章に区切られていて、その都度主人公や時代が変わるので長く読んでいても疲れませんでした。
最後の将虎の超ポジティブ発言には読んでいて元気になれた。
本格的なトリックを探している方は読まないほうが良いと思います。どちらかといえば、ジャンクフード感覚の軽い書物を探しの方はどうぞ。(軽いたって小説自体は長編ですが……)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)



以下ネタバレ




去年読んだ佐藤友哉デンデラに通じる老人の奮闘記。作者の誘導によって登場人物が老人だとは思わないわけだから、最後のネタバレにはいささか驚きを隠せなかった。それまで主人公を仮面ライダーWを観ていたこともあり、左翔太郎をイメージしていたものだから、ネタバレによって脳内の左翔太郎が三国連太郎へと変化していったあの感覚は「うわぁ、騙された」と喜び半面、「俺の脳内設定をぶち壊すんじゃねぇ」と怒りも少しあった。
後は、老人って世間が思うほど暇なのかな? この小説では将虎のように定年後は好き勝手にいろいろな事にチャレンジした方がいいって推奨しているけど、自分が住んでいる場所が田舎のせいかもしれないけど、我が家の祖父母は毎日畑仕事に出ているし土日はゲートボール大会とかボーリング大会に出たり、老人会主催の旅行に月一で行くし、祖父は定年後に取った植木職人の免許で電話で呼ばれれば市内何処でも植木の剪定に行くけど……。祖母も毎日家事を行うし。近所も身体の不自由な方はいるけど、健康な老人は大体外に出ているぜ。
そんな環境のせいか、最後のさくらに対して将虎の言葉は正しくて応援したくなる言葉ではあったが「何を当たり前な」と思わざるをえない気持ちであった。