非公認戦隊アキバレンジャー(第1話から12話まで)

まず、僭越ながら私の独白から。
1999年、深夜のラジオ番組で伊集院光氏が、思春期に抱く過度な自意識過剰な行動やコンプレックスを未だに自身が抱き、時たま言動に表してしまうと発言し、その言動を「中二病」と名づけました。
その言葉がインターネットによって広がり、広がるにつれて本来持っていた言葉の意味の一部が過大解釈され、自虐のための言葉が他者を貶めるような言葉へと変化していったのでした。
現在もその名残はあり、世の若者の一部は「テラ中二病wwww」と人の妄想を批判したりする反面で「ワンピースまじ泣ける」等と、ひとつの妄想を知名度によって測定して評価するという愚劣な行為をするものもいる。

あらすじ:
秋葉原で暮らす、赤木信夫・青柳美月・萌黄ゆめりあの3人は特撮喫茶の経営者葉加瀬博世が自ら開発した『ズキューーン葵』のフィギュアを模した変身アイテム「モエモエズキューーン」によって、「非公認戦隊アキバレンジャー」に変身させる。彼らは秋葉原の平和を乱す敵『邪団法人ステマ乙』を相手に日夜戦うが、その戦いは現実世界で起こっているものではなく「モエモエズキューーン」によって彼らの妄想が増幅された結果、妄想の世界で展開されているものだった。


感想(ネタ無しver.):
去年放送した「海賊戦隊ゴーカイジャー」が製作者の予想を大きく覆し子供から大人まで大ヒットした経緯を踏まえて、東映スタッフが「大人に特化した戦隊モノでもいけるんじゃないのか?」と考えて発案された企画である。
タイトルから読み取れるように秋葉原に住むオタクの主人公三人が謎の敵組織に襲撃される秋葉原を守る為に変身アイテムを使って戦う。オーソドックスな戦隊モノの雛形を持ちながら、そこに主人公達の特性であるオタクならではの特撮ネタを過分に取り入れ、何か事件があれば「これは○○レンジャーの第○○回と同じフラグ!!」的なネタ発言がある。(そこら辺は詳しく長ったらしく説明しないので分からなくても問題ない)
今までの戦隊モノは世界観を現実とは違う別世界にしている事に対して、この作品は現実の秋葉原が舞台になっている。(これは後半において、とてもよい伏線となっている)
ここで面白いのは、彼らアキバレンジャーは特撮のいろはを知っている事に対して敵組織は何も知らないただの悪の組織だという事である。アキバレンジャーは敵の攻撃や言動からこれは特撮戦隊モノで言う所の勝利フラグを探し出すのだ。
例えば、敵が勝利を確信して攻撃の手を緩め「冥土の土産に教えてやる」と何故か事の顛末を勝手に喋りだす。
アニメやドラマでもよくある展開である。
訓練された視聴者はそこに「お決まり」や「見慣れた」というデジャブと諦観を覚えるだろう。そしてもっと訓練された視聴者はコレが『ある布石』であると予感する。
その感覚を登場人物の彼らも予感するのだ。
『これは逆転勝利の布石だ!!』と。
劇中の彼らは、敵のその発言にワイワイと盛り上がり、「勝った勝った」と勝利していないのに大興奮。
敵側はその反応に「なんで?」と不思議がりアキバレンジャーに尋ねるとアキバレンジャーは「これが逆転フラグだ」と技を決めるのである。
こう書いているとアホらしいが、これも後半には途轍もない伏線になっているのでご注意。

ただのパロディ特撮だ、といえばそれまでだが。ただの一般市民だった主人公達が悪と戦い、そこからヒーローへと成長していく姿は、生まれつきそこそこのヒーローの集まりである本家(公認戦隊モノ)には無い。生々しいカッコよさがある。


感想(ネタバレ有ver.):
序盤から中盤までの展開は予想通りの流れだったので、「はいはい、実写版カオヘ」と思っていましたが。終盤の「俺たちってドラマの一キャラなんじゃね」という発想からの主人公達と原作者との戦いは実に良い展開でしたね。
原作者はストーリーを改変し、数々の終了フラグを仕掛けてくるナカでのマルシーナの「製作者の都合で存在を左右されるのはもう嫌」や、赤木の「アキバレンジャーは終わらせない」共闘してのオワリとの交戦など。12話は実に良かった。
ぶっちゃけ、12話はBADENDで終わらせる事も出来たのに、なんだかんだ言ってアキバレンジャーは正義を貫き人を守るってのも良かったわ。
ようは、彼らは12話の最初で言った「これがドラマなら観ている視聴者もいるって事だろ。そいつらの記憶に残ってくれるなら」の言葉どおり、「終わらせない」と連呼していても、これが特撮であってみてくれる視聴者のために登場キャラは何をすればいいのか?どうすれば視聴者を落胆させないのか?を考えて行動していたんだよなぁ。


アキバレンジャーは来週の13話総集編で終わりらしいけど、きっとこの特撮は何処かの誰かの心に残って、ゼブラーマンみたいにそっとコスプレしたり冒涜名掲示もとい、某匿名掲示板で話の種やギャグとして残り続けるのでしょう。




物語は終わらない





PS.
東映が優しければ、戦隊大集合映画で端っこにいたりするのかもしれない。


PS2.
非公式戦隊だからパロディなのか…。あーなるほど