ONE PIECE FILM Z

あらすじ:「新世界」のある島で、古代兵器にも匹敵するという海軍の切り札「ダイナ岩」が奪われる。首謀者は、全海賊の抹殺を目論む元海軍大将ゼット。新世界が消滅の危機にさらされ、その牙は麦わらの一味にも襲いかかる。同時に海軍もルフィたちを追い詰め、青雉が影からその動向をうかがう。巨大な力が次々と迫り来る中、ルフィたちは新世界の命運をかけた死闘に挑む。(wikipedhiaより)


感想:
上映が終わり、劇場を後にした俺の口から零れたのは「してやられた!」の一言である。
漫画版を「スリラーパーク編」辺りで飽きて読むことを止め。テレビ版はSHTの後なのでたまに見る程度だったので。
今までワンピースから一歩置いて生きていました。
嫌いと言うよりも「スリラーパーク編」辺りで、なんとなく新しい島に向かって敵が現われて主人公が敵を倒す。という水戸黄門みたいな流れで続くのだろうと思っていたら、急いで観る必要はないと判断したからだと思います。後、数年は終わらないという印象もあり。

そんなワンピースに興味がない俺が何故観に行ったかというと、「劇場版ハンターハンターの出来が驚くほど酷い」という話を聞いて、凄く面白いと言われている作品よりも凄くつまらない言われている作品を観た方が、話のネタになると思い映画館に行こうと思いましたら。作家の架神さんが「ハンターハンターは酷い。劇場版ワンピースの良さを10%でも分け与えて欲しい」と呟いていたので。ワンピースを観てからハンターハンターという、一定基準運以上のアニメ映画を観てテンションを高めてから奈落に下ろうとジェットコースター的展開を考えてワンピースへと足を運びました。
前作のストロングワールドをテレビで観ていたので、前作の雰囲気から「東映ジャンプアニメ」レベルの作品だと予感して軽い気持ちで観に行きました。

閑話休題
途中で読む事を止めた理由の一つに、「主人公ルフィーが、海賊なのに海賊ぽくない」という矛盾があったからだと思います。
そりゃ、ジャンプ作品だからブラックラグーンみたいに運び屋や客船の襲撃など出来る訳がなく、なんとなく敵対する組織との戦いの連続になり、「海賊じゃなくて正義の使者」ぽくなっていました。現在はちょっと違うらしいですが。
それがこの作品だと、ルフィーがサイヤ人のように戦闘狂で行動倫理は「強い奴と戦いたい」と「麦わら帽子を取り返す」の二つ。
戦闘狂が海賊らしいかどうかは置いておいても、海賊王を目指している男らしい行動。
そんな船長に船員は戸惑いつつ*1も人情で付いていく。

そして主人公達よりもこの映画の中心を担っているネオ海軍のZが、生い立ちから目的・キャラクター性と作りこんでいてカッコイイ。
テンプレ腕力バカの「俺のチカラで世界を制覇してやる」とかインテリ馬鹿の「古代のチカラの封印を解いて世界を粛清する」なんて分かりやすいラスボスではなく、その生きざまが108分の映画を通して実に上手く描写されている。

戦闘描写も素晴らしく。敵を殴るシーンでは大抵のアニメは「顔→振り上げる拳→伸びる拳→敵に拳がめり込む」だと思われますが。このアニメだとあえて無駄なシーンを入れる「顔→振り上げる拳→食いしばる口→伸びる拳→敵にめり込む」という食いしばる口のカットが一瞬入っていて、殴る人間の力んでいる描写が汲み取れるようになっている。*2
ナルガクルガみたいに高速移動を表現する為に目の動きが赤い軌跡となって残る描写も使い所が上手くて安っぽさを感じない。

ストーリーも降って湧いたトラブルを背負い込む主人公ではなく、世界の命運を背負う訳でもなく「自分の道理」を貫き通すルフィの姿はさながら極道映画の主人公のようだった。

ただ、一つ不満を言うと、これはZが主人公以上に中心に置かれてしまった為に、漫画やTVアニメのような作品を期待して観に行くと肩透かしをくらうって事だ。
子供なんかだと、展開のスピードが速いので理解できない可能性がある。


ともかく、「してやられた」
ワンピースをこのようなクールなアニメに仕立て上げたスタッフには偉大すぎる。

*1:戸惑う事が大事

*2:今石さんっぽい