ちょっとチャット

ビオランテはコバチのいつもと違う行動を怪訝そうに窺っていた。
「コバチさん、いつもは使わない携帯をみてニヤニヤほくそ笑んでるけどなにしてんの？もしかしてエロサイト？コバチさん・・・（涙）」
ビオランテはそっとコバチの後ろに回りこむと携帯の画面を盗み見た。

＞乙女さんっていつもなにしてんですか？
＞いつも？仕事してるよ。
＞仕事って？
＞地球を守ってるの。
＞マジっすか？！
＞マジじゃないです（嘘）

「えっ、チャット？」
ビオランテの囁きにコバチは驚いて後ろを見た。
「おぉ、ビオランテ！！なに勝手に人の携帯見てんだよ」
「えっ、いや、コバチさんが随分楽しそうに携帯いじくってるから気になって…。なに、知り合いとチャットしてるの？」
コバチは携帯の画面に向き直るとボタンをムニュムニュ押しながら答える。
「ちげーよ、知らない人。最近知り合ったチャット上の友達」
「ふーん。その人『乙女』って女の人っぽいけど、もしかしてコバチさん好きなの？」
ビオランテはコバチの頭を撫でるとからかう。
「そ、そんなわけ……」
「うんうん。いいよ言わなくても……」
ビオランテはニヤニヤしながら答え、肩をたたく。
「バカ！！死ね」
「はいはい、私は邪魔しないから勝手にチャットでもしてなさい」

＞乙女さんっていつもチャットしてるんですか？
＞そんなことないよ暇な時と、あと・・・
＞あと？
＞コバチ君とするだけかな。
＞そ、そんなうまいこと言って。
＞ホントだよ。そろそろ私たちこうやってチャットするだけじゃなくて、
＞えっ？
＞アド交換しない？ダメかな？

「………」
コバチの指が止まった。
「これって、チャ友からメル友へと変化、いや進化……どうしよう？」
コバチが黙っている間にも携帯の向こうでは「携帯のアドでいい？」「コバチ君？」「お〜い。コバチ君？いないのかなぁ？」なんて乙女のコメントが上から下へと流れる。
待て待て、冷静になれ俺。こうゆう時のために散々シュミレーションもしたし、本も読んだ。知り合いの恋愛相談にも最近は的確に答えられるようになった。考えろ！
・

・・

・・・

「うがーあぁぁぁぁああぁ！！！」
コバチは雄たけびを上げると携帯を地面に叩きつけた。そんなコバチの奇行にビオランテが理由を訊く。
「コバチさん！ど、どうしたの？」
コバチは携帯を指差すと叫んだ。
「こいつはネカマだ！！悪徳詐欺師だ！！」
「こ、コバチさん、そんなことないよ。乙女さんはコバチさんともっと仲良くなりたかっただけだよ」
ビオランテの言葉を無視してコバチはわめき散らす。
「いや絶対に嘘だね」
「そんなことないよ、ほら…」
ビオランテは転がった携帯を拾いコバチに手渡す。
「あっ……」
「なに？コバチさん、そんなアフォ面しちゃって」
携帯に目を向けるとその答えがあった。

「携帯の電源が切れてる……」

そんなこんなで乙女とのチャットは終了しました。
＜ほぼ実話＞