1983年生まれ

「今日から野ブタ。をプロデュースが始まるね」
嬉しそうにビオランテは新聞のラテ欄を見てコバチに尋ねた。
「あん?あんなドラマ誰が見るかよ!!絶対に見ないからな!例え100万円積まれたって見ないからな!!」
「な、なにそんなに怒ってるの?」
コバチはイライラしながらビオランテの持つ新聞を奪い取るとグシャグシャに丸めごみ箱に投げ捨てる。
「俺は同い年の奴が売れるのがムカつくんだよ!!」
「えっ……。それって、ドラマ主演の亀梨くんと山下くんがキライってこと?」
「違うわ!ジャニーズさんとこの人はダンスとか歌とかしゃべりとか昔から努力してるから、全然OKむしろ応援したいくらいだ」
「じゃあ、ヒロインの堀北……」
「女を僻むほど俺は落ちてないし、堀北はたぶん年下だ!なにも分かってないなぁ…原作者!白岩玄がキライなの!」
ビオランテは思い出したように手を叩き
「あぁ、そういえばあの人同い年だったよね」
「そうだよ。ぽっと出のくせしてドラマ化されやがって、書店の発表だと現在41万部売り上げをしてるから、一冊の印税ってたしか定価の一割って滝本竜彦の本に書いてあったから、定価1050円の一割つまり約100円×41万部=4100万円だぞ!そこらにいそうなイケ面に4100万円だぞ。ドラマ化されて売り上げ伸びるからもっと儲かるんだぞ!」
熱弁を飛ばすコバチビオランテは飽き飽きしながら
「まぁ、それは白岩さんの才能と努力の結果じゃないの?」
「もっと努力している作家がいっぱいいるのに?若い作家ばかりピックアップする文学界とマスメディアがムカつく!!若けりゃいいのか!明るいみんな笑える話を書けばいいのか!」
コバチは喉をからして叫ぶ。
コバチさん落ち着いて」
「あぁ〜嫌だぁ。同い年の奴が売れない時期を味あわないで、ひょいと出てきて、まわりにチヤホヤされて、その後捨てられるのが見える。それが嫌なんだぁ……」
コバチの叫びは次第に涙が交じった嗚咽にかわった。
コバチさん…」
ビオランテコバチを慰めながら窓の外を見た。
灰色の空からまた雨が降り始める。また曇りや雨が続き青空はおあづけらしい。
「みんなはい上がれるよ。何度だって…」
ビオランテは誰にも聞こえないような小さな声で言った。