ちょびっとチャット

二ヶ月前にネット詐欺に引っかかりそうになった話はしましたよね。読んでいない方はまずはこちらを参照してから続きを読んでください。
http://d.hatena.ne.jp/kobachiudon/20050930/p2



また引っかかりそうになりました。
それは今日の夜7時。たまたま携帯の調子が良かったのでチャットなるコミュニケーションツールを再度使用してみようと思い携帯をムニュムニュ押していました。
すると、ある女性と知り合いました。まぁ、ハンドルネームかもしれませんがここで晒しては可哀想なので仮名で「紅草能十郎」と名づけましょう。その紅草能十郎とは他愛も無い話を繰り広げ、僕もこの人とは仲良くなれそうなだなぁ。なんて淡気持ちを抱いていましたよ。それは否定しませんよ。しかしですよ。物はいづれ壊れ、人はいつか死んでしまうように、諸行無常の響きありですよ。
そのチャット部屋も制限時間というものが存在しました。僕はそれを寂しいとは思いません。その制限時間内での出会いと別れこそ僕は手軽なインターネット上付き合いを表していてよかったのです。しかし、相手の紅草能十郎はそうではなかった模様です。ラスト30秒の時、急に乱雑なアルファベットの綴りと「メールしてね」の文字が浮かんでいました。
そこからが問題です。
「ひひひぃぃぃぃ……。ビオさん、ビオさんはおらんですの?」
「えっ、何?今からゴジラ見ようとしていたのに」
ビオは煎餅を食べながら僕の携帯画面を面倒くさそうに見ました。
「よかったじゃん。メールしてみようよ」
「それはダメですがな。なにゆーとまんねん!!!」
「エセ関西弁止めて、西からの使者に殺されるわよ」
「はい、すいません。それよりもね、こんなに簡単にメールアドレスを教える婦女子なんて怪しいだろ。絶対にネカマか業者だって!!」
僕の熱弁をビオは鼻で笑うと携帯をいじくりました。
「おい、ちょっとやめろって……。メール送ってアドレスばれたら迷惑メールの数々がオールナイトで来ちゃうジャン」
ビオは蔑んだ目で僕を見ると携帯を返してくれました。
「だから、あんたはバカなのよ。アドレスなんて今日一晩だけ変えて、相手が業者や恐怖メールを送ってくるような下衆野郎だったらすぐに元のアドレスに戻せばいいのよ」
おお、さすが僕の脳内彼女。ただ漠然と本を読んでいる分けないと思ったがこんなにクレバーなヤツだったとは。
さっそくビオが変えた今日一日だけのアドレスでその紅草能十郎に送ると10秒もしないうちに返信が返ってきました。


>ほんとに送ってきてくれたんだ。これ私のプロフhttp://*****


これは……。
「ビオさん。分かりましたぜ。このプロフの後のサイトを開くと架空請求ですな」
「えっ、普通にその人のHPかプロフィールサイトなんじゃないの?」
個人情報保護法が存在する昨今に、そんな美味い話は無いでしょ」
「考えすぎ、別に架空請求だって何度か貰っていてkobachiさんはそうゆう事は無視が一番だって体感して知っているじゃない」
まぁ、そうだけど……。
恐る恐るそのHPアドレスをクイックすると、確かにその人らしい十代の女性の顔写真とプロフィールが書かれていました。そこの自分のタイプ欄にロリパンとバンギャなる文字が、ロリパン?バンギャ?なんぞや?
見たことと写真の印象や趣味から僕が長年対談を望んでいたゴスロリ女ではないかとの疑惑を問いつけると、また直ぐに返信が返ってきました。


ロリィタというより、バンギャかな?
 あなたはプロフとかないの?


そんな、軟派なもの存在せん!!(ブログの横に本当はあるけど)
「ビオ姉さん。そんな菊川玲の大根演技なんか見ている場合じゃないですよ。今後の展開をですね」
「えぇー、どうでもいいよ。あんたの尊敬する滝本竜彦さんだってこうゆうチャットやらメールからファンと知り合って、今は結婚しているわけでしょ。あんたもそうなれよ!!!会いたいとでも打て!バカ」
ビオさんに怒られて、僕はしかたなく一人で次に送るメール文を考えました。しかしながら、さっき届いたメールのバンギャが分からなくては話を膨らませません。
「ビオさん。あの恐縮ですが、バンギャってなんですかねぇ?」
「知らないよ!ゴジラに出てくる怪獣じゃない?」
それはあんただろ!!と突っ込みたかったのですが、あまりの剣幕に怖くなって僕は口を閉じました。
適当にバンギャから離れた内容の無難なメールを送ると、今度は10秒後に返信はかえって来ませんでした。
お茶を飲み、ビオの食う煎餅をくすね、ビオのご機嫌とりをしていると急に返信が!


>今度一緒に遊ぼうよ☆


かなり怪しい。そんなさっき知り合っただけでそんな接触を求めるか?いや、都会の女性は田舎に比べて性にオープンだとどこかで聞いたことがある。いや、ないか?うぅぅぅんどうでもいいや。とにかく怪しいから慎重に事を運ばなくては。
そんなに直ぐに会うのはいけないことだよ。僕は健全で初心なボーイだけど、世間の男は狼さんだからお前なんぞ一瞬でパクリだよ。自分をもっと大事にしなさい。と夜回り先生のような事を送るが、相手は会いたいの一点張り。
そりゃ、僕ちんだって会いたいさ。若いオナゴとトークしたいし、紅草能十郎の口からバンギャの意味を知りたよ。でもさ、あんたの後ろに美人局の怖いお兄さんの匂いがするんだよ。でも、逢いたいなぁーー。
グチグチ喋っていると、ゴジラを見るビオから「逢って金取られてボコボコになれ」の一言。
そんな野蛮な事されたくないので僕はこのようなメール文を作成して送信しました。
『実は、僕はすげぇキモくて、貧乏で、車も持ってないし、童貞だし、頭には円形脱毛症でミステリーサークル存在するよ。脂性で、巨漢、ハードゲイで、ワキガが酷くて口臭臭い。インポ。借金まみれ、前科あり。いつも落ちているお金を探してうろうろするのが趣味なんです』
あることない事書いて、それでも僕と逢いたいと申す紅草能十郎ならば、僕だってあなたと逢いましょう。これはあんたの純愛を調べる僕なりのテスト、試練なんですよ。
と心で思いながら、返信が返ってくることを待ちました。
一時間、二時間、と時が経ち。ビオの見ていたゴジラも終了して、妹もバイトから帰り、祖父祖母も寝て……。
今は日も変わり深夜一時です。
返信はありません。
僕は負けたのですか?
そして、この胸にあふれる寂しさはなんですか?
だれか教えてください。