ハスラー

名作映画を観ようシリーズ第3弾。
ハスラー』を見ました。
きっかけは、ライムスターの「現金に体張れ」より宇多丸パート「まるでハスラー2のポール・ニューマン。騙し騙されても生き残るキーマン」を急に思い出して口ずさんでいたら観たくなったから。ハスラー2を見る為にまずは1から。
あらすじ、
掛けビリヤードの大物フィリッツに対決を挑んだエリック(ポール・ニューマン)は、25時間という長丁場の戦いで引き際を忘れて負ける。
今度こそ勝てる。と、根拠無く意気込むだけのエリック、ある喫茶店で知り合ったアル中気味のサラと同棲、二人は彼女の家に引き篭もり、酒と愛欲に溺れる自堕落な日々を過ごす。そこに現れたスポンサーである長年の相棒はエリックのあんまりな現状に呆れ返りその場を去る。一文無しのエリックは新しくスポンサーを探し出しフィリッツへの再戦を考える。
内容は、中軸にビリヤードの戦いを置いてますが、これは意外と深い内容の映画で、今の日本を表しているような場面が多数存在する。
まず第一に、「勝ち組負け組」が描かれている。
フィリッツは無様に負けたエリックを見下し言う「お前は落伍者(ルーザー、負け犬)だ」大きな試合で負けたエリックを周囲も「落伍者」呼ばわり、自分自身についても「俺は落伍者だ」と黙認し始める。
塞ぎ込んでしまったエリックどうすれば勝利者(勝ち組)になれるか考え始める。行き着く先はビリヤードで大勝して大金を掴めばきっと勝ち組になれるという叶わぬ幻想。
そんなエリックはある日サラとピクニックに出かける。草原でランチを食いながら、ビリヤードへの熱い思いをサラに語るとサラはエリックを見つめて言う。「あなたは勝利者よ」エリックは怪訝な顔すると、サラは言葉を続ける。
「一つの事に熱くなれる事はとても素晴らしい事だわ」
つまりは物欲の充実が勝ち組に繋がるのではない。一つの事に懸命になれるその精神こそが何よりも素晴らしくそれを持つエリックは勝ち組だ。と。
第二に「資本主義とは人情と相反する」
ちょっと前に流行った企業間M&A企業の乗っ取りを見れば分かるように、資本主義とは日本古来より存在する人情主義を排除するものだという事。もちろん人情を伴うM&Aもあるだろうけど、昨今の経済界を見る限りじゃ、人情や義理など合理主義の前には邪魔だという考え。
これも映画では、スポンサーの云うがままに仕事をしなくてはいけないエリックの苦悩と、従うほどに人らしさを失い機械のように金を儲けるエリックの姿を憐れむサラの姿で見られる。もちろんスポンサーの彼だってお金を多く稼ぐ事が実業家の仕事だし、仕事のプライベートを挟むのは二流だという考えは分かるが、悲しい。
それにしても最終的に実業家に搾取される者の行く末は、映画のように終わりなのだろうか。たしかに時代劇で百姓に膨大な年貢を取り立てられる小作人は死にそうな面しているもんね。


感想から云えば、BGMは必要最低限の量しか流れないし、白黒映画でビリヤードの球の色は分別できない、最後のラストの方はちょっと頭使わないと納得出来ないが、とにかく面白かった。面白く考えさせられる物があった。
この調子でハスラー2に期待したい。

ハスラー [DVD]

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