ポケットに名言を
寺山修司著『ポケットに名言を』を随分前に読了していたが忘れていたので今更感想。
ようは寺山修司が個人の趣味で自分の人生上や自己の作品から感銘を受けたり、これは粋だ!と感じた言葉をノートに書いていたんだけど、金稼ぎのためにそのノートを本にした物です。
つまりは名言集。
ストーリーは無いので、際立って感想や解説は無いので、読み小生の心に残った名言をピックアップ!
あの青い空の波の音が聞える辺りに
何かとんでもない落し物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった
谷川俊太郎「かなしみ」
これは有名な詩で、小生も中学か小学校の時の国語の教科書に載っていて読んだ時、何だがよく分からない悲しい気持ちになったものです。今読んでも、やっぱ悲しくなります。小生も多くの物を落として生きてきましたから……。
人生は苦痛であり、人生は恐怖である。だから人間は不幸なのだ。だが、人間はいまでは人生を愛している。それは、苦痛と恐怖を愛するからだ。
ドストエフスキー「悪霊」
この本にはドストエフスキーの小説から抜粋された言葉も多く載っているのですが、それらを読み、ドストエフスキーの本ってまだ読んだ事無いけど、もしかしたら俺と合っているかも知れないと感じるほどダークな言葉ばかり。でもそれをダークと感じるのは、人の闇の部分を小細工無しに切り取ったリアリストの言葉だからかも知れんと思いました。
この世は一つの劇場にすぎぬ。人間のなすところは一場の演劇なり
クリソストラム
対義語って意味じゃないけど、太宰治は”人生は劇場と同じだ。しかし、その劇場には出番が過ぎても居座る演者が多すぎる”とも言っていましたね。いや、この言葉で急に思い出したから。
どうせわたしをだますなら
死ぬまでだましてほしかった
西田佐知子「東京ブルース」
元カノへ贈る。
ロバと王様とわたし
あしたみんな死ぬ。
ロバは飢えて、
王様は退屈で
私は恋で……
時は五月
ジャック・プレヴェール
たまに、暇で死にそうになる。それは膨大な時間の処理の仕方が分からないのではなく、例えば10時から見たいTVがあるが、今8時で後二時間どうやって時間を潰すかと考えている時にこうなる。何も無いなら作ればいいが、限られた時間を有意義に使うって難しい。
なぜハムレットは死後に見る夢のことを苦に病んだりしたのだろう。この世に生きていたって、もっと怖ろしい夢がやって来るのに。
アントン。チェーホフ
歴史は嘘、去っていくものはみんな嘘、そして
あした来る、鬼だけはほんと!
寺山修司「毛皮のマリー」
この二つの名言は、夢とか過去とかはもう恐れる物ではないという事を示唆している。つまりは真に恐れるべき物は未知なる明日である。という事。でも、明日を恐れちゃ可能性を摘む自殺行為で生きていけんけどね。
お嫁さんを貰って、家具を入れて、書き卓を買って、文房具を揃えた。ところが何一つ書くことがなかった。
アントン・チェーホフ「手帖」
滝本竜彦かよ……。
希望とは何か――あそび女だ。
誰にでも媚び、全てを捧げさせ、
お前が多くの宝物――お前の青春を
失ったときにお前を棄てるのだ
シャンドル「希望」
いいね。確かに希望ほど対価のかかるモノは無いよね。そして更に太刀が悪いのはいくら対価を支払おうとも確実に与えてくれない事だね。
ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。花の美しさを見つけたのは人間だし、花を愛するのも人間だもの。
太宰治「女生徒」
自然を破壊しまくって、いざ環境問題が露見し始めたら「環境保護」と高らかに叫ぶ人が嫌い。自分で壊したくせに正義面してそうゆう事を言うなよ、って気持ちになる。でも、破壊した事によって文明は進歩したし、小生はこうやって楽チンにパソコンでブログの原稿を書ける。そして、壊れた事によって、残った僅かな物を大切にしようと思う。
夜、夢を見る者は、夜明けに目を覚ますと一切が空しいということに気が付く。ところが、白昼夢を追う者は危険な人間である。何故なら彼らは、目を開けたまま自分の夢を演じ、これを実現することがあるから。
アンドレ・マルロオ「書簡集」 <<
夢を追う者は時に狂人となる。それは夢しか見ずに、ただそれの実現に全てをぶつけるからで、それはプラネテス二巻の星野八郎太をみれば大体分かると思う。小生はそんな人間に憧れる。
どこでもいいから遠くに行きたい
遠くに行けのは、は天才だけだ
寺山修司「煙草」
あぁ、俺も遠くに行きたい。戻って来られなくてもいいから何処か遠くに……。
- 作者: 寺山修司
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