手紙

拝啓、北国の母へ、
僕は恋をしました。
と言っても、いつも書く元カノではなく、頻繁に利用するTSUTAYAの店員Sさんに。
Sの病的なほどの赤面した顔ときょどり気味な言動にやられてしまいました。めちゃ可愛いです。萌え萌えです。あはは。母さん、僕は都会で大事な何かを失くしてしまったようですね。
失くしたものよりもSさんとの出会いに感謝。てことで、僕はTSUTAYAを利用する度にSさんがカウンターにいる時を狙い、Sさんが接客してくれるタイミングを探り、Sさんの挙動不審な接客にご満悦な日々です。しかしながら、店を出て先ほどまでの自己の行動を客観的に思い返せば、えらいキモい日本国の刑法を読み返せばきっと御ロープ頂戴してしまう犯罪スレスレの好意もとい行為に憂鬱です。
しかし、今思えば、どうやったらSさんと仲良くなれるのでしょうか?ナンパなる軟弱者の行為など硬派を貫き通して生きてきた拙者は死んでも出来ず、かと言って今のバイトをさっさと辞めてTSUTAYAにバイトとして潜入して、そこからSさんとの距離を縮めるなどと時間と今までの苦労を無に返す事などとても出来ず。彼女が不良に絡まれている瞬間に助けに入ろうにも彼女が絡まれている瞬間に出くわす事はとても難しく、じゃあ、知り合いに頼んで不良役を買って出てもらって……。って、そんな今時韓流ドラマですら使用しないネタを使っても効果を得られるとは思えず、
さすれば、僕の出来る事などたった一つ。
そう、祈りです。
『あぁ、Sさんとの距離が縮みますように』
満月を仰ぎ、跪き胸の前で指を組み祈りを捧げる今夜です。





てゆーか、Sさんに彼氏がいたらどうすんの?


母さん、恋わずらいです。