描くテーマを下さい。

思えば遠くに来たもんだ♪


と、歌っていたのは、吉幾三か、北島三郎か、鳥羽一郎か、奈津川二郎の誰かでしょうが。
私は、遠くより帰還してまいりました。
南国の楽園沖縄より。行きと同じく帰りも船での密航だったのですが、狙っていた船が台風の影響により欠航。
次にこの嵐の孤島から船が出るのは5日後と宣言され、5日もあれば何人の命があの『琉球の魔女』の手にかかる事か、終いには「そして、誰もいなくなった」的結果が待っていると恐怖に煽られた私は、急遽船での期間を諦め、空路での本土帰還を目指しました。
急いで格安のチケットを取ったのですが、出航5時間前に欠航のサインが……。
ここまでして私をこの沖縄に閉じ込めようとする『琉球の魔女』の力に恐れを抱きましたが、このまま黙って食い下がる私ではありません。
「なんとか、なんとかして本土に帰らして貰えないでしょうか。本土にはお腹を空かせた我が子が……」
嘘泣きに妄言・狂言の類いを並べ、航空員を落とし見事、他社の航空便に乗らせてもらえることになりました。



そして、どうにかこの大東京に帰ってきたのです。
沖縄に居た時は、あんたに恋焦がれていた本土も帰ってみると、なんだかそっけなく・味気なく。つまらないものです。
私は、とりあえず行き付けの新宿マックに行ってみたのですが、どうも実感がわきません。東京だということは判るのですが、自分が東京にいる感覚がどうも沸かないのです。
私はハッとしました。
東京に居る感覚がないのでなく、私は明日からどこに行けばいいのか判らないのです。つまりは生きる目的をロストしてしまったのだと判りました。このままではいけない。私は急遽、友人各位に連絡して無理矢理今後の予定を組みました。私の突然の申し出なのでなかなかうまくいきませんでしたが、明後日静岡に行く予定ができました。
これで明後日まで、予定を組むことができました。
では、明後日以降は?
何も浮かびません。
皆様、教えてください。
私は何処に行き、何をすればいいのですか?


何もなく、中途半端な若さを持ち、老人にも成れず若者には笑われる私に希望はあるのですか?
苦しむ私の前で携帯が成りました。
なんでも友人の一人が来年結婚するらしいです。
来年か……、来年まで死さえ選べないとは。


そんな私の脳内には、過去に読んだ漫画の台詞がリピートされています。


『人生は、そういうものだよ。
生まれた時、人は白い画用紙と、色とりどりのクレヨンを渡されて、何でも書いていいよ言われる。
さて何を書こうか、考えているうち、たっぷりあったはずの時間は過ぎてゆく…
ようやく描きたいものが決まった時には…もう帰る時間さ。
描きかけの紙とクレヨンは、取りあげられてしまうんだ。』
からくりサーカスより