水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪―

やっと読了。
あらすじ：世界に充満する悪意から伽耶子を守る僕。壊れてしまった梢に軟禁されてしまった家族。メル友だけが救いんおバイト青年。この３つの話が同時進行に進む。虚無と悪意と絶望、歪な愛に支配された物語。
感想：帯の惹句に「愛がテーマ」と書かれていたが、愛はライバルの舞城にでも書かせておけばいい。というか、佐藤友哉が舞城を意識して書ている感が否めなかった。
フリッカー式、エナメルときてこの三作目を読み、俺は確信した。佐藤友哉にとってトリックはもはや邪魔なのだ。無理をした密室トリックや名前トリックなどが内容に於いて煩わしく感じた。（本人もそう思ったのか、今では純文学に付きっきりだし）
前作のエナメルは、色とりどりの変態がわんさか出てきたが、今作は地味で暗い奴らばかりが己の内面を吐露していく流れでちょっと暗い気持ちになった。
探偵役の鏡創士の登場の遅さや、あの家族にしては意外と普通な所（引用病とヤリチンな所以外）がキャラとして弱いような。まぁ、前作の同人オタク兼預言者、突き刺しジャックの稜子や、前々作シスコンで死姦野郎、電話で死人と話す公彦が強烈過ぎたといえば過ぎたけど。
後、伏線の回収が今回あまりされていないのが残念。亜衣とか、元カノとかピアノとかetc.

水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社ノベルス)

次は、佐藤友哉が『鏡家サーガ』を投げ出した最終作品。『鏡姉妹の飛ぶ教室』だぁ。