おぼろげな希望とて不可視あらず、実存する

それは私の何気ないおせっかいから始まりました。
「そういえば、同窓会があるらしいわよ」
「で?」
「いや、で? の一言じゃなくて……そのー、kobachiさんはご出席なされるのかなーと思って」
「出席すると思ってる?」
「いや……」
私はこの時のkobachiさんの悲しみと怒りを入り混じった顔を見て今日も全世界と自分に向けた愚痴が始まる事を予期しました。
「大体だよ。同窓会ってなんだよ! 同じ窓の会って! あれか、IE最高!! word最高!! wmpチョー使いやすい!! お、俺リンゴ派なんだけど……プギャー(^Д^)9m みたいな感じか? windows違いだよ!! バーカ 俺のバーカ!! エルフは何時になったら同級生3出すんだよ!」
「kobachiさん、同窓会の意味からエロゲー会社への文句になってるわ……。それに、一人でボケて一人で突っ込みはちょっと……私がいるんだから、私に役割分担しても……」
「どうせ、同窓会なんて……」
「あぁ、私の言葉はオール無視な訳ね」
「なんか言った?」
「いいえ、続けて頂戴」
「25歳の同窓会なんて。女が。キャー、○○君あの大企業で働いているの? まぁね、と言ってもまだまだ新人同然だけど、もうすぐ僕の企画したプロジェクトが……。キャー凄い!! お嫁に行きたい♪ なんて具合にエリートがチヤホヤされて、俺のような現代版非人はプギャー(^Д^)9m扱いだよ」
プギャー(^Д^)9m扱いってどうゆう感じかしら……。馬鹿にされるって事?
「ちょっと考えて欲しいんだビオちゃん。この世で一番偉い仕事なんて俺は判らないけど。夜中必死に荷物を運ぶトラックの運転手やクーンクーン言って足元に纏わりつく野良犬をガス室に入れる保健所で働く人、日曜日の夜にも休む事無く働くコンビニの店員ほど偉い人間はいないんだよ。みんなが明るく笑って便利に暮らせるのはこうゆう一般的にはやりたくない仕事をしている人達がいるからなんだよ。それを忘れて、高学歴とか高収入の人間ばかり讃えられるのはおかしくないかい? いくら、高学歴で高収入でも、こうゆう人達がいなければ深夜に買い物は出来ないし、増え続ける野良犬に対処は出来ないんだよ」
「まぁ、そうね」
はぁ、またkobachiさんお得意の理論武装に入っていったよ。
「そうゆう経歴や収入ばかり目が行く糞女どもに絶望したよ。だから俺はもうリアル女なんかに興味は無いんだよ!!」
それって、私の事が大好きって事? 嬉しいけど、哲学的というか心理学的に言うと単なるナルシストよ。
「しかしながらだね、好きな二次元はいない!! そうなるともう孤独死しかないわけだよ」
「こ、kobachiさん、あのー私の立場は? そりゃ、私はビジュアルすら構築されていないから一次元の存在だけど……。あのー、一応脳内だけど彼女なんですけど……」
「あぁー。全うに生きていればなぁ……。お天道様に顔向けできるような生き方をしていればきっと同窓会に出れただろうなぁー」
また無視なのね。それにしても本心は同窓会に行きたかったとは……よかった。本当に腐った性根の持ち主になってしまったのかもしれないと思ったわ。よし、ここでいつもの根拠の無い励ましね!
「大丈夫よ。きっと35歳くらいに開催される同窓会にはきっと胸を張って出れるわよ」
「お前はいつもそうやって適当な事を……」
「適当だよ。だって、未来の事なんて私は分からないもの。でも希望を言う事は自由でしょ?」
「はいはい」