サマーウォーズ

あらすじ:ひょんな事から学校のマンドナから偽の彼氏役を頼まれ長野上田に旅行に行く事になった。主人公は、間違いメールの暗号を解いた事から指名手配犯になってしまう。


感想:
全体を通しての感想は面白かった。
でも、自分からすれば『それだけ』の映画。通信簿に「5」を押しても「お前凄いな、よく頑張ったな!」なんてねぎらいの言葉は言わない感じ。
重箱の隅を突付くような、姑が窓枠を指で拭うような事を言う訳ではないが、優等生の映画でした。
自分が映画に求めているモノは、熱さであって、このように理路整然と展開されて「こうやって、こうすれば、ここで主人公が頑張って大逆転♪ ね、感動したでしょ?」なんてつまらないの一言で終わってしまう。綺麗過ぎる。もっとはっちゃけて舞台ぶっ壊して、登場人物を凄くカッコよく無駄に殺して、世界の滅亡よりヒロインの命を選ぶようなストーリーが観たいわけですよ。


まぁ、そんな感情と主観の入り混じった感想を書いても伝わりづらいと思うからここからちゃんと書きます。ちょっとネタバレになるかもしれないから、そこら辺は覚悟の上でお願いします。
この映画は絆がテーマとなっており、現代において希薄となっている『家族の絆』と『ネットを介した他者との絆』を織り交ぜた映画となっている。
大家族の中に放り投げられる主人公と、名家の大家族が手を取り合ってネット世界を混乱させるコンピュータウイルスと戦う*1のだが、ネット世界はまぁ置いておいて、現実世界はどう見てもアニメである必要性がない。どちらかといえば、主役級のキャラの声優を俳優が行っている事でもそうだが、これはドラマの方が栄えるのではないかと思った。特に大家族という事で大勢の人物が登場する割には、個々の魅力や紹介が生かされていない点が多く、そこら辺をドラマで12話くらい使って紹介した方がキャラの存在も高まるし、家族の繋がりが印象深くなったのではないか。
そして、演出については、前作の時かけのようにヒロインが泣くのだが、その泣く演出がクサイ。泣く理由は観ている視聴者だって分かるし、観てる方にはそれを観て泣いているのに、ヒロインがあんなに馬鹿みたいに泣くとこっちが冷めてしまう。天衣無縫なキャラのヒロインだからあのような泣き方なのだろうが、そこら辺は見ている側に配慮してもうちょっと控えめにしてもらいたかった。例えば、泣き声はあのままで後姿だけとか繋いだ手だけとか。
それ以外にも、泣き所は多いが最初に申したとおり、泣かせ方がまるで教科書に沿ったように分かりやす過ぎて、泣いていても、それが主導的に『泣いている』のか。この映画の流れに『泣かされている』のか不安になってしまう節があった。
後は、OZの世界観やネット上での専門用語辺りに序盤だけではなくもうちょっと説明が欲しかった。OZが全てを賄っている世界だから全ての人間がOZを知っている体での話は、コンピュータを使っている人間や若者ならばセカンドライフみたいなもんね。と思えるが、知らない人間からすればアカウント? ログイン? となってしまう点があると思う。そこら辺をコンピュータに疎い人間を1人登場させて主人公辺りが図解入りで分かりやすく説明した方が、大衆向けアニメ映画を目指しているこの作品には必要だったのではないかと。
最後に、『絆』をテーマにしているものの、政府の対応とか、運営の行動とか、警察(1人除く)が出動しない辺りが、これも一つのセカイ系なのだと確信した。



統括すれば、まだ未視聴の方は面白いから観ればいいと思うよ。たぶん後悔はしない出来になっていると思われる。



余談。
田舎育ちで、中学くらいまで、夏休みに親戚集まって30人くらいで軽井沢のペンションに旅行に行く事が恒例行事だった俺だから、あまりサマーウォーズには刺激を感じなかったのかもしれん。


余談2(激しくネタバレ)。
主人公に向けたばぁちゃんの遺言は、二人が東京に戻って仲が良いままならいいが、仲が悪くなったら遺言というより呪言だよな。
フランケン・ふらん1巻でフランさんが言う通り『十代の恋愛は性欲が大半だけど、そこに状況+エピソードがからまり、それが特殊であればあるほどその恋愛のプレミアムは向上する。その価値観が現実を肯定させる力を持ち、二人はちょっとしたストーリーの主人公の気分を味わえるって訳よ』と言っていたが、まさしくその通りだ。状況が戻った場合、エピソードだけで恋愛は保てるのだろうか。教えてエロい人!

*1:つまりは、ぼくらのウォーゲームのリメイク