独白するユニバーサル横メルカトル

『本書は読書時、脳内麻薬様物質エンケファリン、β-エンドルフィンが大量放出される可能性があり、その結果、予想外の多幸感、万能感に支配される事があります』/ハードカバー版裏帯より。
まさしくその通りな本。

感想:
スプラッター映画を好んで観る人は、極度のサドか、自身の身体に一切の危害無く映像として投影される被写体に自身を重ねて悶えるマゾのどちらかでしかないと思う。そして、人間はサドとマゾのみで形成されている。


短編集なのだが、どの話も平山夢明らしく黒くて深い。そして痛い。
幽霊よりも人間自身の内に秘める狂気がテーマとなっている怖い話ばかり。
まぁ平山夢明だから仕方ないよね、でも、帯に書いてあった『このミス一位』は間違いだと思うんだ。「ジャンル分けは人間が行う最低の行為」ってTWIMの伊丹修造が言っていたけど、この作品はミステリーというよりホラー要素が強いと思うのだが。


作品ごとに文体が変化し、人体解体から地図の歴史まで幅広い知識を披露するこの本は、読みやすく軽く鳥肌が立つように凍えやすく夏の夜には最適な一本だと思いますよ。


独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)