ゴールデンスランバー

あらすじ:首相暗殺犯に仕立て上げられてしまった主人公の逃避行の話。


感想:
原作伊坂幸太郎中村義洋監督の組み合わせの映画は『アヒルと鴨とコインロッカー』が最高に面白かったが、次の『フィッシュストーリー』で首を傾げてしまい、今作には期待と不安が入り混じった気持ちで劇場に向かった。
結果は、平均点の映画だった。
劇中のセリフに「私達このままじゃ「よくできました」は貰えても「大変よくできました」は貰えそうにないから別れよう」と彼女に言われるシーンがある。
そのシーンはまさしくこの映画への自分の感想そのままだった。
決して悪い映画ではないのだ。しかし、この映画では感動できない。心が震えない。
何処に問題があったのか鑑賞後に考えれば、この映画が『善意』のみで構成されている点である。主人公を暗殺犯に仕立てようとする存在がいるが、その組織が表に出る事はない。存在するのかさえ曖昧のまま終わる。舞台に現われる存在は気のいい主人公、勘違いしている警察。主人公の人柄を知る友人。何故か主人公を助ける連続殺人犯。主人公を信じ続ける両親。何処にも悪がいない。(ショットガン男がいるが、アレは悪というよりも主張のない為に仕事熱心なだけ)それがつまらない。
逃亡劇なのだから、主人公はもっと酷い目にあって欲しい。そして最後には悪をとっちめて欲しい。そんな勧善懲悪を望んでいた自分としては、最後は完全なBADENDで2時間を無駄にした気持ちだった。
2時間では纏められる話ではないようなのでTVドラマで12話くらい使わないといけないんじゃないの。2時間の映画ではどう見ても説明不足過ぎる。



余談。
逃亡犯の両親の話としては、『ザ・ワールド・イズ・マイン』のトシの両親の話が自分の中では最高の傑作だと思う。マスコミによる報道被害、母のTVに映るトシを頑なに否定する姿。父の弱さ。その全てが絡み合って出来たあの話はこんな映画では越えられないのは当たり前か。

余談2.
キャストが「人との助け合い」がテーマを理解して、あえて脇役に徹しているのに子役が我を押し過ぎていて萎えた。
あの子供のテンションの高い演技はアレだよな。