Be My Last(宇多田ヒカル)

『母さんどうして
育てたものまで
自分で壊さなきゃならない日が来るの』

という歌い出しで始まる宇多田ヒカルの新曲『Be My Last』
この歌詞で私が思い浮かぶのは柳田国男の間引き図である。
その絵柄は産褥の女が鉢巻を締めて生まれたばかりの嬰児を押さえ付けているいう悲惨なもの。
なにより衝撃的なものはその女の蝋燭に照らされ障子に映し出される影絵には角が生えている事である。
昔、飢饉や災害によって食物の収穫が減ると生まれても育てられない幼児を親が口減らしに殺すことがあった。人はそれを『間引き』と呼び、殺すという表現ではなく戻すと言った。その様子を描いた絵が柳田国男の話に出てくる間引き図。
宇多田の歌い出しは、親が嬰児を殺す姿を偶然見てしまった子供が、「なぜあんなに可愛がっていた弟(妹)を母さんは殺さなければいけないの?」といった嘆きが聞こえてくる。
宇多田がそうゆう意図でこの詩を書いたかはわからないが私はこの唄を聞くたびに、こんなに豊かな日本でさえ過去には苦い歴史があるということを忘れてはいけないと再確認する。