一条の光

「ぐふふふふふふ、とうとう完成したぞ!!!」
「えっ、何が?」
「コレコレ!!!!」
ビオはkobachiの指差すパソコンのディスプレイを見た。
「なになに、『そして、あんたが嫌い』……卒論?」
「ちゃうって小説。小説書いたんだ。それもエロくない普通の小説!!」
「へぇ〜。最近パソコンに向かって何かしていると思ったらコレ書いていたんだ」
ビオは一瞥するとまた手に持つ本に目を戻した。
「おいおい、もっと驚けよ」
「単に、昔書いていた自己満足のエロ小説からエッチなシーンを抜いただけでしょ」
「ま、まぁね……」
「それで、まだ小説家になるなんて夢を言っているの?」
「うん。これで一躍有名作家の仲間入りだぜ。どこかの賞に送って大賞とって、ドラマ化されて、印税が入って……」
ビオは本を閉じKobachiを見つめる。
「もう、止めてよ。そんな才能があなたにあるわけないじゃない。作家さんなんて一番才能を必要とする仕事だし、それに作家を目指す人っていうのは中学生の頃から努力しているものなのよ。そんなに気軽に成れるものではないし、そうゆう軽薄な態度は作家をバカにしているわよ」
ビオの的を得た正論にkobachiは黙るしかなかった。
「確かに、そうだよね」
「でしょ。諦めて普通に暮らしましょ。アホな事が出来る時間はもう無いの。私たちもっと大人にならなくちゃ」
「う、うん」
kobachiはパソコンを閉じると寂しそうに部屋を出て行った。
――kobachiさん、もう時間が無いのよ。みんな先を進むのにあなただけ変わらないのは、ただの怠惰なのよ。変わって、良くも悪くも。私の言葉なんて跳ね返すくらいの意地を持ってよ。