権現の踊り子

町田康著『権現の踊り子』を読了
最近、一日一冊ペースで読むのやめて働けよボケ。
なんて天からのお言葉が聞こえるけど無視して感想。
短編集だったので一応一つ一つ個別に。


『鶴の壺』
あらすじ:鶴という友人が病気になり入院していると知った主人公は鶴から預かった壺を返そうと鶴のいる病院を目指す話。
感想:町田康ワールド全開。奇妙奇天烈な人物が多く出てきて、ガハハハって笑っていたら終わった。短編というより掌編小説。


『矢細君のストーン』
あらすじ:友人の矢細君が持ってきた石。矢細君曰くえらい謂れのある石だというがどう見てもそこらに転がる石にしか見えない。しかし、石の価値を信じる矢細君はそれを祭ると言い出して……
感想:昨日テレビを見ていたらゴミ屋敷のだんなが「これは全て骨董品だ!ゴミじゃない」と言っていた。そのVTR明け、山田五郎さんが「まぁ、僕のコレクションだって他人からすればゴミみたいなものですからね」と笑っていたが。骨董の価値なんて所詮、当の本人の思い次第だということですね。じゃあ、鑑定人って価値を押し付けるやっかいな人じゃん。


『工夫の減さん』
あらすじ:物事を1から覚えようとするととてもお金が掛かるので工夫でどうにかしようとする吝嗇な減さんは工夫が多々っていつも失敗ばかり……
感想:これはもう新作落語のような内容。吝嗇な減さんに飽き飽きする主人公。酒びたりで何をやっても正道を通らずに事を行おうとして失敗ばかりする減さんは愛嬌はあるのですが、実際に近くにいたらかなり嫌だな。『悪意のない悪はほどたちの悪いものはない』って言うしね。世界1億5千万人の猫小説ファンの方、猫登場します。登場シーンや暴れる猫の姿可愛いです。


権現の踊り子
あらすじ:アパートに住み着くババァの言うことにゃ、権現市に行けば売っていないものはない。主人公は伸びた髭をどうにかする為に権現市にカミソリの刃を買いに出かけました。
感想:まぁ、結果を言うと権現市に行ってもカミソリの刃は買えなかったんだけどね。それにしても、町田康の世界はいつも荒廃しているなぁ。なんて言うの灰色の空にすす汚れた無人のビル。自殺志願者の如くうろつく町民の姿がいつも頭に浮かぶ。例えるならバイオハザードの町。この作品の言いたいことは、下手に批判してると後で痛い目にあうぜって事で。それは発言するってことは、その言葉の責任をとれる身分であれ。ちゅーことだね。


『ふくみ笑い』
あらすじ:世界中が俺を馬鹿にして『ふくみ笑い』をしている。きっとみんな通謀して俺を馬鹿にしているんだ。いつかお前らのその野望を打ち砕いてやるぜ!!
感想:えっ!?それって『NHKにようこそ!』のパクリじゃん。なんておっしゃる方もいらっしゃるでしょうが。確かにNHKの方が先に連載したけど。これはもっと凄いぜ。しゃれにならないくらいの面白さ。疑心暗鬼もここまで極まれば一つのギャグ。そして、最後のもうなんだかよく分からない異世界模様。笑えます爆笑です。NHKにようこそ!ファンは是非読むべき。


『逆水戸』
あらすじ:水戸黄門一行が世間に蔓延る悪を退治しようと方々を練り歩く物語。
感想:町田風水戸黄門はかなりリアル&残忍。時代劇大好きの町田康さんらしい話で、俺が好きな事を好きなようにSSにしました作品。自由すぎ、でも実際って水戸黄門は日本を縦断していないらしいし、ラーメン食った始めての日本人らしいし、劇中の八っておっちょこちょい過ぎだと思う。町田節を殺した文体においらはちょっと残念だったかな?

権現の踊り子

権現の踊り子