ミサイルの雨という妄想は偉大な蕾となり、向後花を咲かせるか?

昨日の早朝に起きて目に入れたモノが北の方の国からミサイルが発射されたというニュース。
っお、おぉ……、えっマジで?!今?ねぇ今今?!あぁ、3時にね。それも落下点は日本海かよ。よかったまだ死んでなくて。
と安堵して、朝から妄想が始まった。



熱風と倒壊したビルや家屋。
そうだ、今朝のニュースによればミサイルがこの昨日まで平和だった日本を火の海に変えたのだ。俺は崩れかけた自宅を飛び出し、彼の地へ向かう。避難所ではない。そんな所に行った所で落胆悄然するご近所様がいるだけだ。俺の向かう地は其処じゃない。あの女の家だ。救助信号があいつの家から送られた訳ではないのに何故俺はあの女の家に行く?これは愛ではない。そうだ愛じゃない。でも、憎しみや冷やかしでは全く無い。愛は全く無いとはいえないが行動理由の主成分ではないと思いたい。爆心地の東の都の方から熱い風が吹きすさむ。突風は時にビルの合間を駆け抜け悲鳴のような高い音を出し俺の横っ面にぶつかる。冷静になり周りを見渡せば焼け焦げた死体に燃える家。わめき散らす男と火事場泥棒を企てる中年の女。ここは地獄か?俺はあの爆発音で目が覚めたと思っていたが、実はなんらかの事件に巻き込まれて、何らかの突発的な病気に侵されて、寝ているうちにあの世に落ちてしまったのではなかろうか。って自分の生死を疑う。だってそうだろ。もしここが真の地獄ならば俺の目的地は地獄には無い。つまりは辿り着くことが出来ない場所を目指して進まなくちゃいけない。それは苦しい。異世界を求めて旅をするなんてアニメか映画の中で充分だ。歩き始めて数十分、たぶん。真っ黒な雲に覆われた朝では、陽の光が微かで夜に近い朝を維持し俺の時間の感覚を狂わせる。焼け野原と燃え滾りビニールの焦げる化学薬品のような匂いを振り撒く遊具が於かれた公園を右に曲がり、六車線の大きな国道を渡る。当たり前だが走る車は見当たらない。クラッシュした車多数。其処から記憶を辿り右に曲がり十字路を右に曲がる。あった、屋根の瓦は大半を飛ばされているがあの女の家は確かに存在していた。俺の体中に血が行き渡る生きている実感が復活する。よかった俺は現世に生きている。死ぬ実感も無く死ななくてよかった本当に。玄関の前でパジャマ姿のまま呆然と座り込むあの女を見つけて俺は平然を装い、ちょっと近くによったから来てみたよ。風に、よう、大丈夫? なんて白々しく女に言う。女もとい元カノは俺を見つけるなり堰を切ったように泣き出し俺に走り寄る。「なんで生きてんのよ」「はぁ、俺が生きてちゃいけないのかよ」「だってみんな死んじゃって世界中みんな死んじゃったんじゃないかって思って」「死んでねぇーよ。世界は、って言っても俺が見てきた近所じゃ健気に盗みを働くおばさんやら多くの人が行きてんよ」「あんたも生きてんね」元カノは少し笑いながら上目使いに言う。俺ちょっと動揺。「おう、お前も生きてんじゃん。か……」家族は?と言おうとして庭の隅に不釣合いに無造作に広げられた毛布に目を配り咄嗟に口を紡ぐ。そうゆうことか生き残りちゅう訳だね。俺は両手を元カノを受け止める準備をする。しかし、元カノ俺の前2メートル辺りに立ったまま「おいおい、こうゆう時はハグだろ?はずかしがんな!こいうしている俺が恥ずかしいちゅうねん」「だって…………」元カノ不動。しゃあない。俺は目を瞑り心の中で元カノを抱き締め、背中、背骨辺りをポンポンと叩いて落ち着かせる。そんで「大丈夫」なんて根拠のない言葉を彼女の耳元で何度も呟いて、そう声を自分自身にも言い聞かせて。自分の家族の事とか考えて、でも今戻るわけにもいかないので考えて結局、元気でいてくれ。って天に祈る。目を開けてもつれない元カノはウサギのような赤い目をして俺を見るだけで宙に浮かしたままの腕も維持することも辛いのでさりげなく下ろして。「そんで、お前どっか行く所あるん?」「無いけど、ちゅうかこのままじゃ家族が不憫だし……」彼女庭隅の毛布をチラリ。「そうやな。俺が後で穴掘るなり坊主呼ぶなり火葬するなりするから、一旦ウチこいよ」「そうだね」俺は右手を差し出して強引に手を繋ぐ、元カノの体が震えていることが手を通して分かる。それに気づいたのか元カノ手を振り解こうとするので俺は思い切り手を握って前後に振り歩く。誤魔化し誤魔化し、元カノの震えに気づかない誤魔化し、俺の手を振り払われる恐怖から誤魔化し。黒い雲から雨が降る。濡れまいと瓦礫から傘を捜す俺は手は決して解かず、捜索は捗らないがそれでも手を離さず…………。



おぉ、仕事に行かなくちゃいけない時間ジャン。なに俺は大作の妄想を考えとんねん!!
第一、あの女がそんなに弱い女じゃ無かろうに……。あぁ、よかった世界がまだ壊れてなくて。