暗闇の中で子供

この多忙な俺でも時間を見つけて愛する舞城の本は読むんだぜ。って事で、読了。


内容は、奈津川家の中で俺が一番愛する三郎が主人公の『煙か土か食い物』の続編。連続主婦殴打事件もアメリカ帰りの四郎の活躍で無事解決、平穏な日々が戻ってきたはずの西暁町。ある日三郎は愛車のBMWを田舎道で走らせていると、あの事件現場を模倣する少女ユリオに出会う。そうだ!事件は何も終わっていない!!
自称三文小説家の三郎は前回主人公の四郎とは違い、注意深く慎重に物事を運び思弁的なキャラ。四郎は直感的行動派。その一見無意味な葛藤は作者のリンクする所があるのかなぁ。なんて勝手に思って読んだ。
ただ、『煙〜』から比べると余りにも話があっち行ったりこっち行ったりして最終的に答えなく終了となるケースが多くて、(途中も町田康の物とは違った意味で現実と幻想が曖昧になる)これを純粋にミステリー小説として読む人は多分飽きてしまうだろうと予感した。俺も途中ちょっと飽きたし。
例えるならば、この作品はジャンクフードだと思う。脂っこくて美味く次々と口に入れてしまう中毒性がある。しかし、時間をかけて長期的に食しようと思うとその脂が酸化して時間が経つごとに食える物ではなくなってしまう。この本は時間が無く一日20ページから60ページのペースで読んでいた俺は舞城王太郎のドライブ感を味わうことが出来ず、後半は酸化した食い物を食わなくちゃいけなくなった。その為余り美味くは感じられなかった。ちゅう訳。
ただ、読後、奈津川サーガを求める読者が多く居る理由に気付く。これはもっと読みたい。特に一郎や二郎を主人公にした、その後話が気になる。もっとも、これはネタバレになるが、二郎は無理かも、だって……死。(真偽は不明だけどね)じゃあ一郎。いや三郎のあの後も気になる。そう言ったら四郎だってあの後どうするの?とにかく、話題は尽きず続編を誰かが二次創作で書いてくれても読んでみたいもんだ。


<注意>
この作品を読むときは「レッドドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」を鑑賞又は読後読むといい感じです。この予備知識が重要。

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

P.S
どうでもいい事だけど、作中に現れる「陽二」って人物は『阿修羅ガール』の「陽二」なんだろうか?
そして、作中に話題に上がる西暁町の山に住む食人族「クチヒ」は『山ん中の獅見朋成雄』のあのイカれた人達のことだろうか?