告白

町田康著『告白』を読了。
全600ページの長編小説。自分の短い読書暦の中では最長のものだった。
内容は、昭和に起きた「河内十人殺し」の主犯格城戸熊太郎の半生を町田康が描いた作品。
感想(ネタバレ含む)といえば、序盤に主人公熊太郎が自分の思う事を正確に言葉を用いて表現できない事に対して苦悩する。その苦悩が終始熊太郎の人生に取り憑かれる原因だった。俺も思う事を言葉に表すことがたまに出来なくなって喋れば喋るほど自分の心にある真意から遠ざかって、近づかせようと努力すればするほど言葉は浮ついてその軋轢に苦しむ事があり、熊太郎の苦しみは痛いほど分かった。現にこの小説を読んで得た感情をこのブログで表す事が今出来ていなし……。
最後も自分の事を分かってくれると信じていた弥太郎に自分の気持ちを全部吐露した時、分かってもらえなかった熊太郎の気持ちも、その後の行動も痛いほど俺は分かった。
丁度、新装版で発売している「ザ・ワールド・イズ・マイン」の「トシ」と「モンちゃん」の関係に「熊太郎」と「弥太郎」は似ていると感じた。十人殺しをした際に指を切り、山に潜んでいる間ずっと指の痛みを自己の罪の苦しみと例えて悔やんでいた熊太郎は、躊躇いも無く人を殺しすぎて「人を殺し過ぎたら飽きてしまった。殺すのは簡単なのに人を救うってなんでこんなに難しいんだろう」と苦しむトシと心の中でダブった。そういえば、後者の漫画でも、それを話したシーンは山に潜伏していたシーンだったなぁ。
ある書店のこの本のpop(広告)に「人が何故人を殺すのか?!」なんて大層な事を書かれていたが、俺が感じたことはそんな事ではなく、「人はどうしたら分かり合えるのだろうか?」と考えらさせられるテーマだった。
発する言葉が全て真実ではないのなら、僕らはどうやって他者の気持ちを知る事が出来るのだろうか?そして、どうやって自分の気持ちを正しく伝えられるのだろうか?

告白

告白