雨の中で愛を知る男

最近と言うか、今年辺りから「愛」と言う言葉を日常茶飯事に使ってしまうのは、きっと舞城に感化された結果であると思われる。
ようは、柄にも無く「これが愛かぁ……」「世界にもっと愛が満ちますように」「愛してますから」と豪言してしまう俺は去年とは違うぜ!と。



そんで昨日あった事。
元カノにいくら電話しても繋がらなくなってはや2週間。もうあんな女いいや……。ちゅうか俺ってストーカーっぽくねぇ。うわぁ、キモい。と自暴自棄&自己嫌悪に陥り深夜、雨の中コンビニに向かい歩く俺。コンビニで所用を済ませて、また雨の中歩けば、何処からか軽やかなメロディーが、周りを見渡してもこのど田舎のたんぼ道に人などいるはずが無く、音の出所は俺のポケットと気付き電話を出る。
「もしもし、着信あったけどなんか用?」
予想通りに掛けて来た相手は元カノ。あぁ、こいつはいつも良いタイミングで電話をかけてくるよなぁ。となんだか不安の紐が解けて一気に安堵感が溢れてちょっと涙。
「いや、たいした用はないんだけどさ」
「そう。最近さぁ仕事が山積みでやってられないんだよねぇ……。もうアレな状態なんだ。だから電話とか出れなかった」
ここで説明。彼女が言った「アレな状態」とは心身虚脱状態の事で、責任感が人一倍強い元カノは時々そんな疲れて何も出来ねぇーよ。と全ての連絡手段を断ってしまう事がある。
「そっか、大変だね」
「うん。そう言えばアンタ仕事辞めた?」
「辞めてないよ」
「腕のボツボツ治ったの?」
「治ってない」
「なら、早く辞めなって!!」
「ご、ごめん」
「まぁ、いいや。それにしてもさぁ、仕事終わんないよぉ」
「それは大変だと思うけど、友達とかにはちゃんとメールなり電話なり返してる?」
「してない」
「そんな事してると友達失くすぞ」
「そっか。そうかなぁ……」
「そうだよ。俺はお前が大好きだから大丈夫だけどさ」
「あ、ありがとう」



あれ、俺って何軽く会話の合間に愛の告白してんの?そして、元カノもそれに対して感謝の念を述べてるの?
と、これはチャンス到来!!
その後、会話の合間に「愛してる」とか「好き」を入れて、その度に元カノは恥ずかしそうに「ありがとう」と返して、これって付き合っている時よりも何だか親密な関係になっているような気がしてきたその時、
「じゃあさ、仕事が一段落したら、一緒にどっか行かない?」
と、さりげなく言った所。迷い無く即答で答えが返ってきました。





「それはダメ!」




はいはい、ツンデレツンデレ。と心の中で滂沱の涙。
「そっか、ダメか」
「そう、ダメ。私って冷たい女でしょ?」
「うん。温暖化なんて叫ばれている昨今に氷河期が来たかと思っちまったよ」
「きゃははは、ごめんね。あぁ、もうこんな時間じゃん。寝るからそろそろ電話切るよ」
「うん。今度電話するときは液体窒素に体を沈める覚悟で電話する」
「きゃはは、うんうん。そうしなよ。じゃあねぇ」
電話一方的に切られて、俺はまた雨の路肩に引き戻される。あぁ、ズボンの裾が雨でグッショリ濡れる。





明くる日、ちゅうか今日。
朝起きると、俺は世界のエーテルが増加しているような錯覚を感じる。光度増して全てが輝いているような気がする。そこで俺は気付いた。これは愛なのだと。今までの俺の愛なんて陳腐なもので与えるたびに見返りを求めていたが、真の愛とは与えることのみが愛を育て、見返りを求めた瞬間に与えた分の愛のマイルが帳消しになってしまうものだと。俺は曇り空を仰ぎ祈る。神様、いろいろ在りましたけど現世に生まれてきた事に後悔したり、戦国時代に生まれたかったとダダを捏ねたこともありましたけど、今はこう思います。現世に昭和58年の群馬に産み落としてくれてありがとうございます。そんであいつに出会えた奇跡に感謝したいと思います。よかんば、俺の心に広がるこの澄み渡った気持ちが世界中に伝播しますように。
それにしても、あいつに「ありがとう」なんて素直に感謝されたの初めてだったなぁ……。



P.S
あぁ、ノロケ話になってる。
昨日エロ本を買って急いで捨てたなんて駄文を記していたのになんだこの温度差は!!