詭弁部

「レイ」派か「アスカ」派で大討論会を開いたのは、思えば10年前の出来事でした。
10年前にはよくある議題テーマだったので、その討論の席には女生徒の姿も見え、「レイとかアスカよりも俺は奥寺さんが、奥寺さんが……はぅ〜」と思っていた男子生徒もいました。
当時の僕は優柔不断だったので「ミサトさんが」とはいえず、「アスカ」派要員として繰り出されていました。ちなみに当時好きだった子はレイが好きらしく、レイみたいな髪型をしてました。(もちろん、髪の色は水色ではないけど)



そんな、しょうもない議論から早15年。
平成18年の夏、僕ら弁論会もとい詭弁部(森見登美彦よろしく)のメンバーは一人減り二人減りと脱退者が続出して、現在は僕を含め、3人になってしまいました。それも部長である男は、我が詭弁部の部長でありながらTTI(ツガイ対策委員会)委員長をやるという始末でした。
10年前は昼休みの教室だった部室も追われ、今は友人宅。
時代の憂き目にすっかりやられて毎日の討論も、週一へと減っていきました。
そんな僕らの議論テーマも時代と共に……。



A「だから、お前はいつでも巨乳のお姉ちゃんが好きなんだよな」
B「何が悪いんだよ!」
A「はいはい、みくるみくる。いや今ならみゆきか?」
B「馬鹿にすんな!この長門馬鹿!!」
A「長門馬鹿とは、大いに結構。俺長門馬鹿。クール女大好き。岩崎みなみよ、貧乳にめげるなかれ!!」
B「ここで拳を交し合うのは簡単だが、ここは日本だ、一つ民主主義に則り多数決といこうじゃないか」
A「望むところだ」
B「ここまで沈黙を保っていたCよ、お前はどちらを望む。この無愛想女か、それともお前の幼さも世間の荒波によって傷ついた心を包み込んでくれる身体と魂を持った朝比奈みくる嬢か?」
A「けっ、気持ち悪い。俺は信じているぜ、母性本能を売りにする乳だけ女よりも、お前を影ながら見守り、ピンチの時は身を呈してお前を守る、主人の三歩後ろを付いて歩く女性長門有希だろ?」
C「…………禁則事項です」
B「勝ったな。完全勝利だ。その台詞のみで君の気持ちはよーく分かった」
A「クッ、クソぉ。そんな馬鹿な。考え直せ! お前はそっちではない。そんな女の何処がいいんだ」
C「ユニーク」
A・B「どっちだぁ!!!」



僕らの討論はこういった具合に過ぎていく。
10年、僕らは多くの大事なモノを取り逃し、投げ捨て、見て見ぬフリをしてここまで来てしまった。