主人公は僕だった

あらすじ:いつも規則正しく生きるハロルドの生活にある日聞き覚えのないナレーションが入る。そのナレーションは、ハロルドの死を予告しながらハロルドの生活をナレーションしていくのであった。
感想:小説の主人公が自分が小説の主人公だと気付き、己に起こる最悪の展開に立ち向かおうと著者を探す。メタ展開の映画です。
ハロルドと作家が出会い、作家が過去の作品を思い出して自分が大勢の人間を殺していた事に苦悩するシーンや、ハロルドがナレーションに悩まされながらも自分を見つめなおして成長したり、文学専攻の教授のハロルドに対する対応や文学に於ける喜劇と悲劇の作りなど。
最初は単なるコメディーだと思っていましたが意外に考えさせられる内容に驚かされました。
アイザック バシェヴィス シンガーが「人生は神が書かれる小説だ」と書いていたが、もし自分の人生が自分で選んだ選択によって成り立っていたと思っていたが、お釈迦様の手のひらで飛びまわる孫悟空のように全て神によって仕組まれていたモノだったとしたら。なんて素晴らしく下らない物語なのだろう。自分の意思さえ神の計算によって出来上がっていたと思ったら誰も何もしなくなるだろう。しかし、この作品のハロルドはそのストーリーを蹴り破り作者に対峙するまで進んだ。
誰かに描かれた最悪のシナリオが待っていようとも時にあえてそこに進む意思が大事なのだと私はコレを見て思った。
アイザック バシェヴィス シンガーは、あの言葉の後に「神にお任せしようではないか」と書いている。
これは諦めの言葉でなく、持てる全ての努力をしたからこそ言える言葉であって欲しいと願う。