バットマン:アーカム・アサイラム 完全版
あらすじ:狂った街、アーカムシティ。そのアーカムシティでエゴを奮った精神異常者を治療する『アーカム・アサイラム』。精神病院でありながら狂った街が作り出したクリーチャーを誰一人治療する事が出来ないでいた。
ある日、ジョーカーがその病院に篭城しバットマンの召喚を要求する。
悪を憎みながらも悪人を殺す事を自制しているバットマン。
ジレンマを抱く場所にジレンマを持つ男が向かう。
感想:
ゲーム版『バットマン:アーカム・アサイラム』のストーリーとは、「バットマンがアーカム・アサイラムに行く」辺りの話のみで全くの別物でした。
今作は過度に原色を使ったキャラクターや「DAAAAAAAAAAASH!!」とか「ZBAAAAAAAA」とかいうアメコミの独特の描写が無く、西洋絵画のような深遠な描写のある。帯に書かれていた「問題作」という意味が良く分かる独特な回。
同日発売のダークビクトリーを読んでいるせいか、気の弱いトゥーフェイスに違和感。また医者が処方したトゥーフェイスの選択に多様性を持たせて自己を回復させるという話は面白かった。そして、最後にバットマンがあのコインを返されて自分を判断させるというラスト。バットマンはあの狂った病院で自分が狂っている事に対面しながらも、「狂気よりも強い存在」になろうと姿。
難しい話で何度も読まないと理解できない作品ではあるけれど、読むにつれていろんな解釈が自分の中で生まれていく。
ともかく、初心者向けではなく、中級から上級者向けの内容なのでご注意を。(まぁ、自分も「クレイ・フェイス」とか「ドクター・ディスティニー」って誰やん!?程度の初心者ですが。)
この完全版には、漫画のほかに脚本や資料も収録されています。
脚本を読むと漫画で描ききれていない話の描写や、描写の解説なんかが書かれているので付録と一緒に読むといい感じです。脚本家のグラント・モリソンの凄さというか面倒くささがにじみ出てる。
余談。
廃棄液の池に落ちたり、ギャングに硫酸を掛けられたり、と「暗い過去」を言い訳に犯罪者となるクリーチャー達に対して、幼き頃に両親が殺害されたという同じ「暗い過去」を持つバットマン。
根本が同じだからゆえに自分をさも正義と称するバットマンをジョーカーは憎む。「お前も俺も頭の中を開ければ同じピンク色の脳みそが入っているくせに」的な。
同じだと言う事をバットマンも理解していて、それゆえに彼らを殺す事が出来ない。(仲間とは思っていないが同種。はたまた、何かが違っていれば自分がそちら側にいたかもしれないという恐怖。もちろん、彼らと同じ場所に立ってはいけないという殺人の否定)
その事をもしかしたら当の本人よりもジョーカーは分かっているじゃないのかなぁ。だから今回のラストでも「別れってのは切ないもんだよな。でも、結構楽しかっただろ? 元気でな…外の世界でも。あのだだっ広い精神病院でも*1辛くなったら思い出せよ。お前の場所はいつでも用意してあるからよ」なんて言ったのかなぁ。またキリングジョークでもそんな事言っていたけど。
バットマン:アーカム・アサイラム 完全版 (ShoPro Books)
- 作者: グラント・モリソン,デイブ・マッキーン,高木亮,秋友克也,押野素子
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 単行本
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