キック・アス

あらすじ:スーパーヒーローに憧れる一般人の主人公がヒーローに扮して町の平和を守ろうとするが、漫画のように上手くいかずにチンピラにのされて重体に陥る。もうヒーローなんてやめだ!と退院すると、チンピラと戦っていた時の様子がネット上で公開されていて彼はヒーローと呼ばれていた。


感想(ネタバレ):
原作版と映画版は大きく違います。
原作版は、皮肉じみたヒューマンストーリーだとすれば、映画版はアクションコメディです。
自分は原作版の最後の何一つ得られず元の生活に戻る主人公が大好きで、製作者の「結局、現実なんてそんなものさ」と言わんばかりのシリカルな終わりが、まるで滝本竜彦の小説のようなどうしようもなさに好かれ、映画版を観に行きましたが、映画版は原作とは大きく違い、最後に主人公は全てを手に入れヒーローになってしまう展開でした。
興行収入を考えれば、あんなに暗く陰湿な原作どおりに作るなんぞバカのすることですが、原作を無視するのならば、せめて名前を変えろよ。と一言だけ言いたい。


一番むかついた場面は、最後のシーンでも彼女が出来るシーンでも無い。一番は火事のシーンだ。
原作では、レッドミストと初対面を交わしたキックアスはレッドミストに誘われるがまま彼の車でパトロールと名ばかりのドライブを楽しんでいると燃え盛るマンションを見つける。マンションの前では人の名前を呼び悲しむ人がおり、誰かがマンションに取り残された事が伺えた。うろたえるレッドミストとは対照的に、彼に先輩ヒーローとしての威厳を見せつけようと燃え盛るマンションの中に飛び込むキックアス。(狙いはどうあれ、キックアスがヒーローとしての勇気ある行動を示す。彼が変装野郎からヒーローとして目覚めたシーン)
映画版では、ドライブ中に燃え盛る工場を見つける。うろたえるキックアスを尻目に燃える工場に飛び込むレッドミスト。(工場には調子にのるキックアスを倒す為に待ち伏せしていたマフィアがいた。レッドミストはマフィアのボスの息子でキックアスを連れ込む事が任務だった)レッドミストを追いかけるように仕方なく飛び込みキックアス。
この火事のシーンはキックアス覚醒の場面として描かれるべきが、全く描かれず、後半にヒットガールに助けられて覚醒するキックアス。
ヒットガールに助けられて覚醒だと、単なる逆ギレだけじゃねーかよ!!。


ともかく、原作ファンは観るな。
原作を知らない人ほどたぶん面白い映画だと思う。ヒーロー映画としては主人公が一般人だから迫力は無いけどね。その分、ヒットガールの動きは凄い。