アーサー・ピューティーは夜の魔女/木々津克久(1巻)

あらすじ:南米で発見された未知のウィルスは人類が築いたさまざまな航路によって世界中に行き届きパンデミックスが起きる。ウィルス感染者は未感染者を襲い始め世界は混沌の坩堝に陥る。そんな世界で感染者から必死に逃げる「アーサー・ピューティー」と従者「アタル」の逃亡劇である。


表向きは!!


感想:
フランケン・ふらん」を代表作に描く、臓物がポポポポーンと飛び出る絵を毎月描いている稀有な漫画家、木々津克久先生はあらすじに書いたような在り来たりゾンビっぽい物語なんぞ書くわけが無い。
実際のあらすじは

未知のウィルスに感染した感染者は、知力発達や体力向上、そしてなによりも恐ろしいのは『人に化ける魔物を見分ける能力』を得てしまう。人に似て人のフリをして人を操ってきた高度な知的生命体。俗にいう吸血鬼や魔女、神、怪物と呼ばれてきた者たちにとってはそれは大いなる脅威であった。今まで搾取してきた者から反逆。主人公アーサー・ピューティーもまた夜の魔女と呼ばれ、有力な魔女であったが暴徒と化した人間の攻撃に遭い住処を失い、世界のどこかにある魔物たちの理想郷を探し世界を転々とするのであった。

コミックフラッパーという、見た事も聞いた事も無い雑誌に掲載中(掲載終了?)の漫画。
木々津先生らしいブラックユーモア溢れる話の数々に「フランケン・ふらん」好きなら間違いなく満足できるマストバイな一品です。「ヘレン」好きな女性には、いろいろと辛い場面がありますが最後まで読んでいただくと、勧めた理由が納得できると思います。
ふらんが医療ネタを得意にすることに対して、アーサーは魔女なので何でも来いのバーリトゥードゥ、どんなジャンルのネタも調理できるのが良い点でもあり、魔女ゆえに困ったら魔力で解決できるので落とし所よりもストーリー展開にチカラを入れないといけない中々難しいテーマが多いです。ふらんでは描けず、ヘレンでは描けるがグロが描けない欲求不満になってしまう「時空ネタ」等が一冊に2話も入っているのが、フラン・ヘレンとは違った方向性での漫画が期待できそうです。

余談。
6話の強キャラについて。
アレだしたらもうダメじゃね。どんなにいろんな話を描いてもアレがアーサーの追われる理由を作り出したとしたら、もう素直に滅ぶしかないよ。木々津ワールドにおいてアレは完全無欠の最強キャラなんだから。俺なんて登場しただけで泣いちゃったよ。ふらんに登場した不死の男が太陽を見て「ここにおられましたか」状態で昇天しかけたよ。
でも、あの願いがアーサーの要望を汲んで「全ての生き物が幸せになりますように」だったら、どうなるんだろ。豚とか牛とか野菜とか食っている生活はまず無理だから。それこそ全生命総ホヤ計画が発動するんかな。