ジョーカー

あらすじ:神の恵みか悪魔のいたずらか、精神病院からジョーカーが退院する。出所を出迎えに向かったジョニー・フロストはジョーカーの元で働き、ジョーカーのノウハウを手に入れて大物になろうと画策する。これはそんな哀れなジョニー・フロストと狂気の権化であるジョーカーの物語である。


感想:
タイトルが「JOKER」なだけに、ジョーカーが主人公で話が進む。バットマンは本当に終盤数ページ登場するだけである。
精神病院から退院したジョーカーが一文無しから街のゴロツキどもに自分の恐怖を再教育し成り上がる。その光景をジョニー・フロストを通じて読者は体験するという体である。
この作品に描かれるジョーカーはダークナイトで故ヒースレジャーが演じたジョーカーにあまりに似ているが、特に関連は無いと前書きにて書かれている。それでもそっくりであると自分は思う。
ジョーカーはゴッサムシティにて狂気を撒き散らす。自己の利益と権力を再興させる為に、シマを取り戻し裏切り者を殺す。ハービィはそんなジョーカーを止めようとするのだが逆にジョーカーに弱みを握られてバットマンにすがりつく。
誰も定義出来ないジョーカーの狂気をストーリーでは暴力とジョーカーがジョニーに呟くセリフによって表現しようとしているのだが。この作品、日本人から観るとムショ帰りの元ヤクザが怒り狂って子分と一緒に裏切り者を探し出して復讐する仁侠映画に見えてしまい、ストーリーに在り来たり感を否めない。


ジョーカーがジョニーに言う笑い話。

ジョーカー「堀の中で知り合った男がいてな、そいつは車で、しかもたったの一日で世界一周することが夢だってんだ。そいつは本当に出来ると思い込んでいた。実際、何度も試したらしい」
ジョーカー「失敗に終わった日の夕方、そいつは道路脇に座り込んで己の不運を嘆いていた。そのうち親切な男が乗った車が止まった」
ジョーカー「そいつは男を殺し、…もちろん男の妻も子供も一緒だ…自分の車に彼らの死体を乗せ、火をつけた後、相手の車を奪って走り去った
ジョーカー「それから、ガソリンを満タンにして日の出を待ったもう一度挑戦する為に」
ジョニー「結局、失敗したんでしょ」
ジョーカー「ああ……だが、肝心なのはそこじゃない」
ジョニー「じゃあ、なんです?」
ジョーカー「分からないのかジョニー? 奴は失敗を車のせいにした。自分の行為が不可能なことだなんて思いもしなかったんだ」
ジョーカー「尊敬するよ、本当にな」

この笑い話の中でジョーカーは信じ続ける強さが自分には無いと告白している。狂気であるがゆえに何かを信じたり、何かに固定される事が無い男の願いが表されていると思う。ゆえに信念を持つバットマンが憎いのかもしれないが。そう思えば、バットマンに対する執念だけは狂気に満ち、誰も定義できないジョーカーの唯一の信念なのかもしれない。

ジョーカー (バットマン)

ジョーカー (バットマン)

絵がアーティスティックで良いので、ストーリーはありきりだけど面白いよ。ストーリーは同日発売のマッドメン&ラバーズを薦めるけどね。