星を追う子ども

あらすじ:放課後、一人で鉱石ラジオを聴く事が唯一の趣味であるアスナはある日山で出会った不思議な雰囲気の少年シュンと仲良くなる。あくる日も遊ぼうと約束して別れるが、当日彼は現われず彼の遺体が川から揚がったと知らせを受ける。あまりのショックで塞ぎこむアスナの元に臨時教師モリサキの言葉からシュンを生き返らせる為にアガルタを目指す。


感想:
新海誠監督の作品って、全部見た訳じゃないんですが、「ほしのこえ」や「秒速5センチメートル」等から、世界は綺麗なんだけど主人公がウジウジしていて暗いアニメが専門なのだと思って、今作もきっと背景は驚くほど綺麗なのにストーリーは暗くてジメジメしたモノだと高をくくって観に行ったのですが。
まぁ、なんと言うの。
観た人の80%は最初の10分で思っただろう感想で、意外性を書いて注目を浴びたい私としては負け台詞と同じなんだけど。言うね。


ジブリ


もうね、キャラデザから田舎育ちの主人公が子猫と戯れながら見晴らしの良い崖で鉱石ラジオに耳を傾けている。その最初のシーンだけで「これってジブリだよね」って思っちゃったの。そう思うと、捻くれ者なので「ジブリではない場所」を探して「やっぱ、これジブリじゃない、ジブリっぽくしているのは皮肉的な演出なんだ」って心の安定を図ろうとするのだけど。どうも、話が進んでいっても「コレは祟り神じゃ」とか「なんだろう、このキャラから溢れるムスカ臭」ともうジブリなんですよ。何から何まで!!
最後は観念して「そっか、これはジブリスタッフが手伝っているんだ」と開き直ってスタッフロール眺めたらジブリの文字が無くて不安になってしまったよ。
新海監督がどのような道を切り開こうとしているのか分からないが、こうもまぁジブリっぽい映画を『新海誠監督最新作』と銘打つくらいなら宮崎監督に「ジブリで映画撮らせてください」って言って『ジブリ最新作』で作って欲しい。きっとその方が今の数倍は興行収入を見込めると思うし。今のジブリの若手監督に任せるよりはだいぶ安心出来るよ。もしかしたら、今作はジブリへの売り込みの為の作品だったら私は飛んだバカですけど。



ストーリーについて(ここから過度にネタバレ含む)。
意外と、私はモリサキ先生の事好きでした。
あの分かりやすい行動理由と目的。最初はムスカっぽく登場して、次第に「ロリコンもいいよね」って感じにアスナに心を開いていく姿。生と死の門に向かう為に崖を一人で降りるシーンなんて「うぉ、頑張れ彼女生き返らせろ!!」と心の中で応援してました。だって、彼女を生き返らせても誰も困らないでしょ。そりゃ村のジジイが「生命の尊さ」とかのたまってましたけど。一人生き返ったくらいで何が変わるって言うんですか。心停止した患者を電気ショックで生き返らせる行為にも同じ事を言えるのかと(それは暴論)。まぁ、とにかく死んだ彼女を生き返らせるってアニメとしては分かりやすいテーマなので是非達成して欲しいと思っていたんですが。高層ビルのような崖を降りきって「おぉ、先生すげぇ。そして先生オメ!!」と喜んでいた私と先生の前に現われたガンツには俺が絶句しました。ここでガンツは無いだろ、と。上記でも書きましたけど散々ジブリをパクっておいてガンツはないだろと「ここはシシ神様だろうと」。まぁそのガンツの中でシシ神様みたいな神様が現われるんですけど。そしてその神様が言うわけですよ「望みを叶えよう」って。そりゃ先生は「彼女を生き返らせてくれ」って言うんですけど。今思えば当たり前で、その時も「そりゃそうだよな」って思ったんですけど。あんなに困難を乗り越えて現地民から素晴らしい神だと賞賛を得ていたその神様が「魂は持ってきた。(無から有は作れないから)彼女の身体はどこ?」って訊ねてくるとは思っていなかったよ。魂は持ってこれるけど肉体は用意出来ないんだと。先生以上に期待していた神様が死神程度で全知全能とは程遠い存在だった事にショックを受けました。まぁ、その時にアスナちゃんが空気を読んで現われてくれたので、先生は「君とは今会いたくなかった」と遠回りな謝罪を述べてアスナの身体に彼女の魂を入れて「あー、そっかロリコンに目覚めていた先生的には中学生の身体に最愛の彼女って最高ですね」って私は先生の真の目的に「先生万歳!すげーロリコン先生すげぇ!!教師と教え子という関係もプラスされて、こりゃ東野圭吾の『秘密』越えキタ!」と胸を高鳴らた訳ですけど。東野圭吾側からのクレームがきたのか、神様がまた条件突きつけてきて「幼女の身体に魂を入れる場合は追加料金いただきますね」って具合に、先生の目玉を抉るって酷くない。あの神様にハガレン読ませろよ。全然等価交換の法則外れているし、後だしで条件追加ってどこぞの使い魔かよ。それで、先生の目が見えなくなって、目を押さえる先生を観ながら私は心のアテレコで「目がー目がー」と亡きラピュタ王の声を当てて楽しんだ後、契約書だと思いましたよ。何事も書面に記すべきだったんですよ。目が見えなくても伊良子清玄の前例があると先生は必死にアスナに乗り移った彼女と会話して泣いて、その時の先生は大満足だったと思いますよ。あのガキが変な正義感振りかざして飛行石を砕いてハッピーエンドに持っていった時は、私はあまりの理不尽な正義に怒りがこみ上げてきて、洞窟でワニの化け物と戦っていたムスカの先生にDメールを送ろうとかたく誓いました。内容は「がきから ナイフう ばえ」と。
とにかく、先生が好きでした。

後は、どうでもいいんですが。アスナの田舎でのボッチから「私はココではないどこかに行きたい」とか、田舎を離れて「私は寂しかったんだ」と言う薄ら寒い言葉に。理由を見極めずにただ単に現状を嫌う女子高生が軽い気持ちで都会から来た男とセックスして、その流れで家出して金が無いから身体売って金を作って、現実から逃げる為にドラックに嵌って身も心もバラバラになる90年代後半によくあった設定の堕落が浮かんできました。でも、ようはそんな感じだよね。あの異人がアスナを捕まえただけでエロい事しなかったせいで。私はあのシーンで「こりゃ薄い本がでるな」ってニヤリしました。


ということで、オススメです。
ジブリが好きなら大抵を受け入れられる素晴らしい作品です。
先生の彼女の声がナウシカと同じだったのですが、あれはいくらなんでもやりすぎでは。



余談。
これが楽しめれば、フラクタルも楽しめるんですかね。
山本監督は好きなんですけどあの人嫌いなんですよ。