キャタピラー

あらすじ:日中戦争時の日本。戦場から帰ってきた黒川久蔵は、戦地で受けた爆撃によって、頭部の火傷、両手両足の切断、聴力を失いまるで芋虫のような姿となって生まれ育った村へと帰ってきた。日本軍は久蔵をお国の為に身を捧げた軍神であると讃えたが、そのあまりにも醜い姿を見た親類は久蔵の世話を久蔵の妻であるシゲ子に押し付けた。


感想:
江戸川乱歩の『芋虫』っぽい話だと思いながら観ていたら、元ネタというかオマージュ作品だった。でも、『芋虫』よりも反戦に対する主張が強く、所々に当時(?)の映像を織り込み、この作品がただのフィクションではなく何処かで必ずあった話だと強調付けている点にもそれがとって感じられた。OP曲やED曲の選曲にも色濃くみれる。
両手両足を失い自らまともに動く事も出来ず、聴こえないから喋れず意思の疎通が出来ない久蔵がまず求めたモノが性欲の発散であり、そんな久蔵を見た妻のシゲ子が久蔵に対して最初に行った行為が久蔵を殺して自分もその後を追う心中だった。というのは只ならぬ恐怖を序盤から感じさせてくれた。
カップルで鑑賞するものではないし、観終わった後に爽快感は得られないのでそうそうお勧めは出来ないが、それでもやはりこのようなどうしようもない惨めでだらしなく悲しみに満ちた物語は、戦争を体験していない人間は見ておくべきだと思うなぁ。

キャタピラー [DVD]

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余談1。
武器マニアの人の話を聴いていたら、武器を持つ人間に一番大事な心構えは「この武器怖い」という気持ちらしい。大きな剣や、打てば射抜くクロスボウを持って「カッコいい」とか「俺強そう」とか思うだけ人間は、武器というのが人を殺傷する為に作られているという本質を見極めておらず、大抵自分か誰かを痛い目にあわせてしまうので持つ権利が無いとの事。
それを聞いて、こう戦争映画やアクション映画を観てきて、やはり主人公が颯爽と悪人を倒す映画が観ていて爽快だし楽しいし観終わった後に馬鹿にも万能感を覚えてしまうが、結局は人殺しの映画であるという事実と戦争とは銀幕の中では「カット」の声の後は死んだ人間も殺した人間も笑ってビールを酌み交わしているかもしれないが実際の戦争はそんな事は必ず無い。死んでも生きても苦しんだ人がいるという事実を伝える暗くどうしようもない映画も観る必要があるんだよな。「映画が好き」という人間の義務として。


余談2。
うーん、やはり戦争になったらクマさんが演じた村人のように馬鹿の振りしてこの馬鹿げた世界が早く終わる事を祈るしかないんかなぁ。