戦闘破壊学園ダンゲロス


最初にこれを読むあなたに質問です。あなたの前に超凶悪致死性ウイルスを作り出す女がいるとします。その女は特異体質で体臭のように身体からウイルスを放ちます。ウイルスの発生は彼女が任意で操作出来ます。そのウイルスは空気感染した人間を即座に死に誘います。即死します。
さて、あなたはどのような中二病設定を用いてその女の能力を無力化し女を倒しますか?




こんな事を言っては失礼ですが、答えはありません。答えはありませんが正解は数多にあります。
ただし、「ウイルスを無効化する能力」や「身体が無敵になる能力」などのウイルスに対する対抗能力を考えた方は中二病レベルが低いのでこの本はオススメできません。
逆に「『時を遡る能力』を使ってウイルス女の両親を殺してウイルス女を因果の彼方へ吹き飛ばす」や「『幻覚を魅せる能力』を使ってウイルス女を誘惑する」等の能力の応用からの対抗策を練ったあなたにはオススメします。
ようは、この「戦闘破壊学園ダンゲロス」はあなたの中二病レベルが高ければ高いほどに楽しめる作品だという事です。*1


それでは、作品の紹介です。

あらすじ:『この先、DANGEROS! 命の保証なし!!』
そう書かれた警告看板の先に広がる巨大な敷地を有した高校、『私立希望崎学園』は、世界で問題視されている超能力を有した新人類『魔人』の高校生が多く在学する日本で一番珍しく一番危険な学園である。その学園では、学園の秩序を守ろうとする生徒会と『生徒会』に敵対する『番長グループ』との命を掛けた戦い「ハルマゲドン」が行われようとしていた。そんな危険な戦いを前に一般生徒はとっとと帰宅し、教職員は保身の為に地下のシェルターに逃げ込み学園は嵐の前の静けさを保っていました。その戦争を己の利に使おうと魔人差別主義者の長谷川教諭は、個人的に『転校生』と呼ばれる暗殺者を呼び魔人の根絶やしを画策。これはそんな超能力高校生達の血で血を洗う抗争の物語である。


感想(ネタバレ無しver.):
元はTRPG*2ということで、出だしはそのダンゲロスの説明から入りますが、そこはあまり気にせず、TRPG版ダンゲロスのPRコーナーだと考えて軽く読んでも問題はありません。飛ばして第一話である『友釣歩魚』から読んでしまっても、まぁどうにかなるでしょう。
このダンゲロスには、非常に多くのバイオレンス&セクシャリティな表現を含んでおりますので、そこは注意してください。「読み終わったら勃起が止まらないぞ!」と私に文句を言われましても、「私は何も出来ませんのであなたの母親か祖母にでも相談してはいかがですか」ぐらいしかお答えできません。
ストーリーは超能力を持つ高校生達のバトル物で、ハンターハンターとバトルロワイヤルを混ぜたようなモノと考えていただければよろしいかと。ただ、世間に数多と存在する能力者バトル物とは一線を画くしておりまして、例えば、読んでいくうちに妙にクローズアップされた人物が現われたとします。物語に彼は多く現われ、作者の文章に彼の心情や生い立ちを妙に精緻な描写が取れる。読者はそんな彼を好いたり同情したり、これは主人公、または大事なキャストだと認識するでしょう。きっと彼を中心に物語が進み彼の生命は物語の後半まで維持出来ると勘ぐるでしょう。
それは大きな間違いです。
*3あなたの好いた、同情した、感動した、想像した彼は、あっけなく死にます。驚くほどにあっさりと容赦なく死んで話が進みます。
その驚きは物語に多く存在しますのでこの本を読む予定のあるあなたは、決してキャラクターを好かず、同情せず、感動せず、想像せずお読みになることをオススメします。*4絶望しますから。





感想(ネタバレ有ver.):
読後のあなたに送る。
「俺は鏡子さんが大好きだったんだが、お前は誰が好きだった?」
やっぱ邪賢王ちゃん? それとも白金(女)先輩? 一刀両も可愛かったよな、ほらセーラー服に袴とかなんか萌えって感じだよな。駒沢とあげはのカップルとかも「かんとりーろ〜♪」とか口ずさみたくなるくらいイイ感じだったよな。転校生で紅一点の黒鈴も健気に脳みそ食うってユキミを慕うのも可愛かった。って、脳みそ食うのは無しだけど…。絵が無いキャラでいうと口舌院言葉さんとか良いキャラだったよな。俺の脳内では完璧にめだかボックス安心院さんの絵だったけど。歪み崎のユガミイズムの能力で存在する明るい虚弱体質キャラってもの良い。まぁキャラ立ちしてナンボの小説ではあったがどれの気になるキャラばかりで、早々に死んでしまうのでとても私はは悲しかったよ。
世間じゃ赤蝮先輩と鏡子さんのぴちぴちビッチ発動中のシーンが衝撃的だったと言われているけど、ド正義があんなに簡単に死んだ事が私的には驚きだったよ。だって表紙のあの絵が作中に存在すると普通思うでしょ。だからさ、ド正義と邪賢王は最後まで残って一騎打ちとかすんのかと思っていたらマ○コ見つめて死ぬなんてかっこ悪すぎだろ……。詐欺じゃん。
兎に角、この小説を読むと超能力というのがいかに弱点丸出しであり、能力者バトルが作者の都合で描かれているかが良く分かったよ。後、タイミングと情報。カードゲームのように手札を切るタイミングを間違えれば最強能力も屑そのもので、逆に役に立ちそうに無い能力にも輝くときがある。それもこれも、戦場の状況を逐一仕入れ思慮しなくては始まらない。鏡子の能力は絶大だが夢見崎がいると封じされてしまう。白金先輩と邪賢王ちゃんの位置取りが逆なら戦場は番長グループが優勢になっていたかもしれない。あの時一刀両が拉致されなければ邪賢王は切られていたし。福本剣の存在を転校生が知っていれば転校生は無双して勝てた。しかし、そうなればそうなったでまた違う問題が生まれて思いがけない結果に辿り着くかもしれない。
小説ながら、ポイントポイントでの人の動きを「たられば」で想像して自分なりの物語を作っていける辺りはTRPGが原作という特殊な生い立ちならではだった。


漫画版は月刊連載だからまだ友釣歩魚しか登場していないけど、今後の流れで名前はあるけど絵が無いキャラがドンドン出てくると思うとワクワクですな。それも漫画家がオナニーマスター黒沢の人じゃないですか。いやぁ楽しみだけど。鏡子関連(ぴちぴちビッチから葬式)や赤蝮先輩のレイプシーンどうするんだろ……。あれは青年誌でもキツイんじゃないのか。


真面目に感想を言うと、
最後の乙女が転校生サイドに渡り、セカイの理を得る流れは、自分としては「キャラクターがゲーム盤を飛び出しプレイヤーに成り代わる」というメタ展開を見て、
『「認識の衝突」を勝ち得て「自分は神に愛されている」と「認識」する』という流れは、惑星のさみだれで半月が叫んだ天才の定義
『天才とは!! 無限の肯定!! “ラッキーパンチを千回決めるすげー自分”の直感を!! ありえねーと否定せずそれもアリだと千回肯定する者!! 直感を肯定する内神業を千回実現するすげー自分!! それが天才!! 技なんかオマケ!!おれすげーの瞬間を!! すげーおれの存在を!! 肯定し肯定し肯定に肯定をかぶせろ!! 考えるな!! 直感し続け 肯定し続け 確定し続けろ!!』
と同じだと。
ようは自己の確立を他者に頼らずに行い、その結果を世界に、目の前の他者に見せつけ、例え拒否されても揺らがない動じない。
中二病に掛かり妄想をいくらしてもそれは中二病でしかないが、その中二病に『神に愛されている』と盲信して『無限の肯定』を確定する人こそが創作者と成りえるんじゃないかという話に思えたのだが。


まぁ、これも中二病か……。


戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

余談だが、
どこかアニメ化しませんかね?
エロシーンとグロシーンなんて演出でどうでも出来るんじゃないですか。
無理かな?無理だよなぁー。

*1:性表現や暴力表現などに対する耐性も必要ですが、そこら辺は慣れればOKでしょ

*2:http://www34.atwiki.jp/hellowd/

*3:ある意味、この小説ではその「勘ぐり」を覆す事が一つのテーマになっているのですが

*4:まぁ、そんな事は出来ないように筋道が立ててあるんだけどね