流れる

小林泰三先生の本をBOOKOFFで買って、「グロホラ〜♪グ〜ロ〜ホラ〜♪」と自作の歌を歌いながら家に帰って、ページを開いて数枚読んで、小林先生は確かに作品ごとに文体が変わるが、なんだかぱっとしない文体だなぁ。と不思議がって結局最初の短編を読み終えて釈然とせず表紙をもう一度観たら作者名が『小林泰三』ではなく『小林恭ニ』だった。
この何処に向ければいいのか、そして怒ればいいのか、悲しめばいいのか、嘆けばいいのか、笑えばいいのか分からない気持ちをグッと堪えて、ググッたら世の人々も同じ間違いをしていたので「お前ら馬鹿だな」と嘲笑してやりましたデスわ。
そんで、間違った本は捨てるのも勿体無いので読んでいるんですが、その短編集の一遍「流れる」という話が面白かったのでココで紹介。

話は、江戸時代の某農村。その村には大きな河川があり上流からいろいろな物が流れてくるのでした。
ある日、川上より少女の水死体が流れてきました。見つけた漁師は哀れんでその水死体を川から拾い上げ埋葬しました。
またある日、今度は手足を縛られた僧侶の死体が数体流れてきました。上流には山賊の砦があり、そこで山賊がなんらかの悪事を働き、死体を流していると村の人間は考えました。また、下流に住むの役人に見つかっては何かと言われるので掬って埋葬しました。
次は奇形児の死体が、その次は派手な服を着た女の死体が、次々と流れてくる遺体を村人は掬っては埋葬し続けました。村に流れ来る死体を見世物にしようと商人が現われましたが、村の評判を損ねる事と、この事を役人に告げ口するのではないかと不安になった村人は殴り殺しその死体もまた埋葬しました。
次の日、今まで埋葬していた死体が掘り起こされ消失するという事件が起きました。村人は誰がやったのか犯人を探しましたが結局見つからず、商人が泊まった宿の者が生前の商人と繋がっており死体を見世物小屋に売ったという無茶苦茶な理屈で宿で働く者に石を投げて打ち殺しました。
それからも村には水死体が流れ続きましたが、今度は一気に大量の水死体が流れ続け、その死体を掬っては埋葬する事に村中の人間が係りきりになりました。下流の役人にバレては大事に当たる、かといって上流の山賊に文句を言おうものなら殺されてしまいます。腐って悪臭を垂れ流す死体を村人達は黙々と救い上げ穴を掘りました。精神は擦り切れんばかりでした。
数年後、大きな身体の女の死体が流れてきました。
その死体を見た寺の住職は、この死体をミイラにして村の御神体にしようと提案しました。村人は疲れ切っていたので、これで死体が流れてこないならと多くの人は同意しました。次の日、寺に賊が入り寺は焼失、あの死体は寺の前で犯された跡を残して転がっていました。それはさすが役人にも見つかり、役人による捜査が始まりましたが、また犯人は見つからず役人は帰っていきました。
それからもずっと死体は流れ来ては村人は掬っては埋葬を続けました。無視して下流の役人に伝えようという意見もありましたが、大量の死体が招く腐臭と伝染病を恐れて掬い続けるしかありませんでした。
ある日、村人の一人が川に身を投げて自殺しました。
それを皮切りに村では暴力事件と川に入水する自殺が多発しました。死体の処理を行っていた男はもとより関係ない女子供まで川に向かって自殺し始めました。上流から死体が流れてこなくても村人は殺しては死体を川に投げ、自らの身体を川に落としました。
『それはまるで、ようやく自分たちが得た権利を行使しないでいるかと、むきになっているようにも見えました(原文の一節)』

大体こんな話。(物語のもう一つの問題点、庄屋の部分はあえて記載してないのでちゃんと知りたかったら本を買うんだ)
薄気味悪い話でしょ。
これを読んで思い出したのは、世にも奇妙な物語で放送した『穴』って話。(参考:http://yonikimo.com/db/public/243.html
川上は『世にもの穴』のように村の未来と繋がっていたのではないかという空想が生まれる。
「夏休みの宿題を後回しにすると大変」という教示も含んでいますね。ポジティブに考えれば。
とにかく読むのだ。または俺にお茶を驕って全編のあらすじを語らせるのだぁ。