るろうに剣心(実写版)

あらすじ:幕末に「人斬り抜刀斎」として恐れられた伝説の剣客緋村剣心明治維新後は「不殺(ころさず)」を誓い、流浪人として全国を旅していた。神谷薫との出会いや、同じ激動の時代を生き抜いた宿敵たちとの戦いを通じて、贖罪の答えと新たな時代での生き方を模索していく。(ウィキペディアより)


感想(ネタバレ無しver.):
上映時間が2時間と長丁場であるので、所々だれる点があるものの。現在、春の筍の如く乱立する漫画原作の映画としては、及第点な出来となっている。原作を無視したオリジナル展開ではなく、可能な限り原作を順守して作りましたという点や漫画特有の過度な人物描写(装い、口癖など)も表現している。またワイヤーアクションを用いた剣心の殺陣は前横という2D的だった時代劇のアクションシーンに上下の動きを入れることによって、漫画描写では表現できない神速と呼ばれた飛天御剣流を観る事が出来る。
主人公役の佐藤健の演技もさることながら、注目すべき点は、外印役として登場する綾瀬剛の鬼気迫る演技は、原作の外印の印象とは全く違う武闘派戦闘狂となっており。剣心と外印の戦いは、個人的は一番の名シーンだと思っている。
ストーリーは、原作の東京編(左ノ助との戦い。鵜堂刃衛との戦い。武田観柳との戦い)を武田観柳中心に繋がらせている。ちなみに現在連載されている『るろうに剣心シネマ版』とは話が違っている。




感想(ネタバレ有ver.):
一応無料で観たので、適度に褒めておこうと思い上記の文を書いた。
真実というか、本心はこちらに書かれる。


世界が絶叫した『ドラゴンボールエヴォリューション』を1800円だして劇場で観た私は「もう、何も怖くない」の極地に至っているので、るろうに剣心が実写化されるという第一報を聞いた時に、「随分作りやすいモノを選んだものだ」と驚きよりも妙な納得が湧いて出た。「北斗の拳」や「ハイスクール奇面組」辺りの方が先に実写化される方が先だと思っていたからだ。
そして、試写会に当たり皆様よりも一ヶ月早く鑑賞したのだが。
まず、舞台設定がナレーションとともに始まる。*1
原作と同じく、拍子の抜けた冴えない剣客として剣心(佐藤健)が現われて、お祭を観ながら何かを発見してこう言う。


「おろ」


原作を既読者の方なら「あー、こんな口癖あったなぁ」と懐かしむだろう言葉。そして、「こうゆう実際にいたら痛いだろう言葉遣いを何故に忠実に表現してしまうのだろう」と現存し、未来に誕生するであろう漫画原作のドラマや映画に対するなんとも言えぬ危惧。
この「おろ」の二文字。台詞に出すなら2秒満たない言葉にこの映画に対するモチベーションがグッと下がった瞬間でした。
「おろ」でますよ!「おろ」。覚えていた限りだと劇中に数回は「おろ」「おろ」言いいますよ!!


そして、この映画のヒロイン神谷薫が登場する。
漫画の印象から、20代後半の印象があったので武井咲演じる短小で若くどうみても師範代に思えない、か弱さを持った存在に違和感を覚えたが、さっきウィキペディア
を読んだら、漫画版の薫の年齢設定が17歳だったのでそんなものかもしれん。*2
その後、左ノ助(青木崇高)や明神弥彦役の子役が出て、新型阿片で富を築こうとする武田観柳(香川照之)が出てくる。
いつも通り(?)香川照之の怪演が光り、漫画ではそんなに印象に残っていなかった武田観柳が随分奥深い成金野郎となっている。武田観柳が登場するならば、その新型阿片の製造を行った高荷恵も登場する。最初見た時に、栗山千明様にみえて「あー、あの人ろろうに剣心好きだったから出演できて嬉しいんだろうなぁ」と。
「僕のこの原作大好きだったので出演できて嬉しいです」を地で行っている展開に観ているこちらも喜んでいたら。
スタッフロールで高荷恵(蒼井優)となっており。じゃあ栗山千明様は?と自らの目利きのなさに絶望した。
ちなみに何故か、隠密御庭番衆は現われず、鵜堂刃衛(吉川晃司)、外印(綾野剛)、戌亥番神須藤元気)が武田観柳の手下として登場する。
鵜堂刃衛は分かるが、他の二人を選んだ理由が知りたかったが。二人が劇中に名前で呼ばれるシーンが無いので、外印と戌亥番神だと分かるのはスタッフロールだけだったので、逃げ勝ちであった。(その事については下記)
ほぼキャストの紹介は終わったか。と思ったら劇中で一番ミスキャストを忘れていたので紹介する。出番は序盤から出ているが最後まで「こいつ必要だったか?」と首を捻る出演回数とタイミングである。
斉藤一江口洋介)。
漫画では「痩せた狼のよう」と容姿を現されているが、江口洋介では地黒にガタイが良さが相まって随分と健康的な斉藤一となっている。斉藤一の「悪・即・斬」というストイックさは見る影も無い。つーか、言わないし真面目に警官やっている。

キャストの紹介で分かるが、大体のストーリー

祭りを見ながら団子を食っている剣心を巷をにぎわせている人斬り抜刀斎だと勘違いして勝負を挑む薫。
剣心は逆刃刀をみせて「これは切れない刀だから」と納得させると、なぜかそれを受け入れる薫。
武田の新型阿片製造が嫌になって高荷が逃げる。
警察で保護してもらうが、それを知った武田が刃衛を仕向ける。
警察署(?)の署員を血祭りに上げる刃衛。混乱に紛れて警察署から逃げ出す高荷。
警察署から出てくる時に刃衛と薫がバッタリ出会う。
血まみれの刀と容姿から人斬り抜刀斎だと直感した薫は刃衛に勝負を挑む。
薫劣勢。その時、剣心が助太刀に参戦するが、警察が集まり休戦となって解散。
剣心を己の道場に匿う薫。身の上話。
翌日、起きて剣心を探す薫。しかし、そこに野生のエグザイルこと山賊のような身なりをした崩れ志士達が現われ、道場の明け渡しを脅迫してくる。
多勢に無勢。薫また劣勢。剣心が助けに入り野生のエグザイルが警察に捕まる。ついでに剣心も捕まる。
留置所にて、斉藤一と戦場以来の再会。ここで左ノ助も登場する二人の会話から左ノ助は剣心が本物の人斬り抜刀斎だと知る。
剣心は斉藤と山県に勧誘を受けるが、其れを拒否。
昔の好で釈放。
その頃、道場の前で雨に濡れて倒れている高荷を弥彦が助ける。
道場に、剣心、薫、弥彦、高荷が揃う。
四人で赤べこで牛鍋を突いていると、武田が襲来。野生のエグザイルを倒した腕を買いたいと剣心に迫るが、そこで左ノ助が現われて、「本物の人斬り抜刀斎を倒したら俺を雇ってくれ」と勝負を挑む。
赤べこの外で斬馬刀を持った左ノ助と闘う事になるが、剣心は剣を抜かずに防戦に徹する。
その華麗なる逃げ様に武田は剣心こそが真の人斬り抜刀斎だと実感する。剣心と左ノ助の戦いは左ノ助の興が醒めておざなりに終わる。
その夜、高荷の元に外印が現われ「気をつけろ」と忠告を残す。また武田邸では海外より取り寄せたガトリングガンが届く。
翌朝、薫の下に病人が多く担ぎ込まれる。その症状と外印の言葉から井戸に毒が盛られていた事に気付いた高荷は解毒作業に取り掛かる。
騒ぎが収束すると高荷は武田の暴虐を止めるべく単身で武田邸に乗り込む。
それを知った剣心と左ノ助も後を追い武田邸に乗り込む。
公園くらいの庭を埋め尽くす崩れ志士(野生のエグザイル)を蹴散らす二人。
邸内に入ると、戌亥番神の襲撃にあう。
アクション映画お決まりの「ここは俺に任せてお前は先に行け」と左ノ助VS戌亥番神の戦いが始まる。
剣心の下には外印が二丁拳銃で襲い掛かる。
戌亥番神をバックドロップで倒す左ノ助。
二丁拳銃の弾が尽きると小太刀でナイフ術を見せる外印。なんだかんだで倒す剣心。
武田が篭城する部屋に行くとガトリングガンで応戦する武田。
ひょっこり現われる斉藤。「お前らが注意をそらせば俺が倒す」と作戦を発案。
剣心と左ノ助が二手に分かれて注意を逸らしている時に、上空に釣るされたシャンデリアを狙って牙突を打つ斉藤。
シャンデリアに押しつぶされる武田。
しかし、助けた高荷から「薫が刃衛にさらわれた事を知る」。
廃寺の前で待つ縛られた薫と刃衛。そこに怒り心頭で現われる剣心。
薫に『心の一方』を掛けて呼吸不全にする刃衛。
それに激怒した剣心は昔の人斬り抜刀斎に戻る。
薫を助ける為に刃衛を殺そうとする剣心に、自力で『心の一方』を解く薫。
殺されず殺せない刃衛は自殺。
二人道場に帰える。
終わり。

話自体は良く出来ていた。
剣心の昔話がくどく「昔、人を殺しすぎちゃったから」ぐらいの理由で不殺の誓いを持っていた方が映画的には良かったように思える。または司令で皆殺しを命じられたが、子供は殺せなかった的な奴の方が道徳観に訴えていてよかったんじゃね。原作を完璧に順守していないんだから。それくらいは寛容になった方が。
それと隠密御庭番衆はやはり出すべきだった。
客の7割くらいが女性だった点から、四乃森蒼紫を出すべきだった。いいキャラだし、続編を作る際には必ず必要になる一因だっただろうに。
隠密御庭番衆を出さないで、縁派の外印と戌亥番神を出したのか不明だ。それも外印は漫画ではインテリ端のカラクリ師なのに対して劇中ではメタルギア雷電を模すかの如く忍者。戌亥番神は、須藤元気が演じ、雰囲気は似ているもののその特徴である無敵鉄甲が装備されておらず戦い方はプロレスとボクシング、本当にただの元気な須藤元気であった。(駄洒落だよ)


ストーリーがダメでも、アクションは凄いんでしょ。
なんて思う方もいると思うが、実際アクションはそんない凄いモノではなく。邦画のアクションってのは、スピードを出す為に「カメラをぶれさせる」「急にスローモーションや加速を入れる」「切り替えを多発させる」「ワイヤーアクション」で出来上がっているから、この5つの組み合わせだと分かっているとつまらないもんよ。それも、剣心が物語的な問題から逆刃刀で闘う訳だから、時代劇とかである斬ると血がプシューってでる演出が使えない。何もを切っていないから死体は無傷で横たわっている。何も切っていないから切る音「ズバッシュetc.」が使えない。*3だから、「なんか剣心が剣を振り回していたら敵が倒れていきました」という盛り上がりに欠ける殺陣だった。爽快感が全く無い。そのくせスピードを表現する為にカメラの切り替えだけはチャッカチャカして疲れるし。

せめて、実際に龍槌閃や龍翔閃が観れればOKだと思っていたが、全然、技を使わずに「そうか、リアリティを持つ為に技は使わないのか!ナルホド」と思っていたら、申し訳程度に最後に双龍閃を使われて、「技設定ありかよ!!」と内心で突っ込んだ。
牙突も出てくるが、技名は言わず、天井に吊るされたシャンデリアに目掛けて打つのみなので「江口洋介がシャンデリア目掛けて剣を掲げてジャンプした」だけの印象しか持たなかった。牙突は構えて飛び込むシーンを横アングルから取ってくれれば……。
二重の極みは存在しない。



こんな感じです。
るろ剣が大好きな人だと「え、まぁこんなモノかな?」って不満を覚えてしまいますが。
るろ剣ちょっとだけ読んだよ。クラスの人だと面白いと思います。

ぶっちゃけ、数多くの漫画原作の映画の中じゃ「観れる」映画なので凄く暇な人なら良いんでない。



俺はこの映画の事は全て忘れてダークナイトライジング待機に戻る。

*1:幕末が終わり明治に変わった的な

*2:漫画版剣心28歳なんだけど28と17って現代じゃアレだな

*3:金属音だったけど、あれは刃が当たっているって設定?