THE GREY 凍える太陽

あらすじ:
石油採掘場で働く労働者を狙った狼を狙撃する為に雇われたスナイパーのオットウェイは、家族のもとへ帰る他の作業員とともに飛行機に乗っていた。 ところが、その飛行機は嵐に巻き込まれ、雪原の真ん中に不時着。生き残ったオットウェイらは、自分たちがオオカミの縄張りに来てしまったことに気づくのであった。


感想:
先日、製作総指揮のトニー・スコットが亡くなった。死因は橋からの飛び降り自殺だった。理由は脳腫瘍とも言われているが、真実は闇の中である。

『THE GERY』を観に行こうと思った矢先にこの不幸を知ったので、こりゃ是が非でも観に行って、葬儀代の一部にでもなってもらえれば本望です。


内容は、雪原に不時着*1した飛行機から生き残った乗客が雪の中を生き抜く。設定だけは在り来たりな雪山遭難物です。
しかし、そこに狼の恐怖が上手くブレンドされていて。そもそも主人公は狼をしとめる事を生業としていたようは狼の天敵であった存在が、銃を失い科学の無い世界で狼に追われるという因果応報が存在します。また主人公は親との葛藤や、恋人との問題*2。雪に埋もれた石油掘削場で狼を殺し続ける仕事に疲れ果てて、生きる意義を失っている状態でもあります。
そんな主人公が、掘削員と共に雪の中で狼やアクシデントを乗り越えて生き抜こうとする姿はとても感動しました。
主人公が父親から習った詩「もう一度闘って、最強の敵を倒せたなら、今日死んでも悔いは無い」はストーリーにたびたび登場し。場面の最初ではネガティブに、後半では主人公を奮い立たせる応援として機能します。
映画の98%が男で出来ていているのですが、その男達が焚き火を囲んで車座になって各々の過去や家族を話して笑いあうシーンは、『THE・男の世界』といった風貌でよかった。まぁ今思えば、壮大な死亡フラグ作りだったのですが。
たびたび不可解で無駄な事をするシーンがありますが。*3そこが男の武骨さみたいなものを表していて良かったんじゃないですね。


余談。
あそこまで生への執着を描いた作品を残してトニースコットは亡くなってしまったのは、人生の奥深さというか。人というのは脈絡も伏線も無く死んでしまうという切ない現実が残りました。

*1:飛行機は真っ二つになったが

*2:これが恋人の死なのか恋人が療病中なのか不明

*3:水に沈んだ男を助ける時に足を見ない。わざわざ崖から木の上にロープを通す