妄想戦記 ロボット残党兵 全5巻

あらすじ:第一次世界大戦後、戦争で負傷した兵士を助ける為に失われた体の一部を機械で補う技術が開発された。そして、第二次世界大戦、その技術を応用して全身を機械化し鋼鉄の兵士を作り出し戦況を脱却しようとする計画が各国で行われ始める。
物語は日本。病魔に蝕まれて余命幾ばくも無い三船敬三は、機械化人間開発における第一人者であり親友の高橋に自身の全身機械化を心願するのだった。





感想(ネタバレ有)
鉄人28号の主題歌にこうある。

あるときは 正義の味方で
あるときは 悪魔のてさき
いいも わるいも リモコンしだい

これは鉄人28号はリモコン操作であり鉄人28号事態に善悪の判断を認識するようなシステムは無い。鉄人28号は兵器である。というメッセージであり鉄人の弱点を現している。
では、その鉄人28号にコンピュータを内蔵したらどうだろう。敵味方を認識して、味方を助け敵を討ち負かす快刀乱麻の戦いをする最強のロボットになるはずだ。
しかし、高性能コンピュータの製造は難しい。
いやいや、作らずとも人間は思考するコンピュータを持っているじゃないか、頭の中に……。*1


この作品はあらすじでも書いたが、機械による身体欠損の修復、今で言うサイボーグ技術が第一次世界大戦後に確立された架空戦記モノである。
ソビエト満州侵攻に日本は世界に先駆けて脳以外全てを機械化した『首都防衛機械化人間 日の丸人』を部隊として戦場に投入する。
戦車を飴の様に捻じ曲げる怪力、ジェット噴射による超跳躍、鋼鉄の身体は拳銃の弾を弾き、爆風にも耐え、痛みを感じず、手足が欠損しても代理のパーツを装着する事によって短時間で戦場に再投入出来る『機械化人間 日の本人』は、苦戦を強いられていた日本軍にとっては正しく超兵器。戦況を一変させるモノだった。
その戦果によって、世界中で機械化人間の製造が加速され戦争は機械化人間の性能が全てを握る時代に入る。
主人公、三船敬三は妻子を、しいては女子供を戦争の被害から救うべく機械化人間になるのだが、戦場に送り込まれた時、自分達を整備する人間が女学生だという事実と女学生を守れなかった現実に落胆する。
やはりそこのシーンが、三船が、平和の為に身体を捨てて無敵のチカラを持った結果の理想と現実の差に打ちのめされる名シーンですね。特に女学生達が悲しみを機械化人間には見せないで裏で泣くってのが。
序盤では、高橋が新民党の襲撃を受けて左目を機械化した時の苦笑。と助手を機械化すると決めた時の笑顔。助手の時に機械化人間に対する異常な愛情を表現し、自身の左目が機械化された現実で処女性の喪失というか、肉体に機械が混じった事で吹っ切れたんでしょうね。ここら辺が序盤の感動したシーン。
中盤のタワラ環礁戦は感動の嵐なのですが、機能的にも性格的にも灰汁の強い機械化人間達ですかね。狙撃タイプとか重火器タイプとか超巨大型とか、チャラい満州とかハリマオとか。兎に角序盤では機械化人間の無敵さがアピールされていたが、タワラ戦では機械化人間の内面が掘り下げられ、かつアメリカ軍も機械化人間を投入してきたので対等または劣勢での戦いによって機械化人間の人間性が現れ戦争モノとしての重みが出た戦いだった。
特に優子ちゃんの心臓を抉るシーンは感動的でしたね。
任務の為に参戦して命を失う覚悟を決めたのにその覚悟を踏み潰されて、自分を失っていた優子ちゃんが身を捧げるシーンは良かった。次のページで「半機械化人間だから処置すれば助かる」の台詞で「助かるんかい!!」って突っ込みを入れてしまったが。
三船の隠れた能力には燃えた。新武器とかだと思っていたらアレだぜ。個人的に特化型に弱いから尚更燃えた。
終盤の世界ロボット大戦。
機械化人間が叛乱を起こしてドイツを中心に独立し、人類に宣戦布告してくる。歴史をなぞるのではなく「機械化人間」というアイテムによって独立したストーリーに昇華した話。
今まで暗躍のみしていた森が表舞台で三船やハリマオと一緒に戦うという、これまで読んできた読者へのサービスのような戦闘が観れましたね。
服部が機械化人間側と人類側両方のバックにいて望みが世界平和ってのは、自分だけの地球を狙っていたのでしょうか。
ここで彼らが人類側に付くってのが、お決まりながら熱かったりします。
世界の壁攻略戦や山中との戦い、愛国人VSシュマイセンと面白い戦いが沢山あるが、もうちょいのんびり描いてほしかったという印象が。*2
ラストと後日談のほんわかさは良い後味でした。



総括として、
ロボットモノとして観ても戦闘がツボをついていて、読んでいて興奮するし、機械化された人間の愛憎・哀愁は読んでいて切なく人とは何なのか?と自身に問う。
絵のタッチが新人さんなので荒削りな部分が多く読みづらい箇所もあるが、世界ロボット大戦くらいからかなり洗練されてきている。*3
演出も上記に然り。ただ世界観とキャラ設定がそこら辺を大きく補っているように思える。*4
架空戦記としては、歴史に弱いから良く分からんな。


武骨な昭和のロボットアニメをもう一度みたいと思ったらまず読んだ方がいい作品です。お勧めします。



そういえば、鉄人28号も日本軍が起死回生の秘密兵器として開発していたんだよなー。*5

現在、コミックリュウにて続編『大昭和怪人伝』が連載中。今月のスプリンターの話は『ロボット残党兵』を未見の私がヤラれた回なのでご一読を。


ロボット残党兵 (1) (リュウコミックス)

ロボット残党兵 (1) (リュウコミックス)



余談1.
女性が女学生集団を除くと、10人以下という素晴らしく男臭い漫画でしたね。

余談2.
凄く頑張ってたが、いつも面白さを3割くらいしか紹介できない自分が歯がゆい。

余談3.
1巻の表紙が筋肉少女帯の「断罪、断罪、また断罪」の表紙に似ていると何処かで読んだけど。俺はアイアンマンマーク1に見えた。
というか、このロボット残党兵って和製アイアンマンと捉えても良い作品だと思うんだけど…。

*1:超人間ケリーですね、分かっています

*2:コミックリュウはいろいろあったらしいのでしょうがないのかな

*3:何があったというくらい

*4:だからこそ、終盤の戦いは駆け足ではなくもっと大事に描いて欲しかった

*5:これで無理矢理繋げた