レクイエム・フォー・ドリーム

あらすじ:ニューヨークに住む未亡人のサラは、毎日をやることがなくTVを観て暮らしていた。そんなサラの元にTV番組出演の依頼が舞い込む、サラは喜び勇み友達に自慢したり髪を染め直したりとやる気に満ち、昔着ていた赤いドレスでTV出演しようとするが。サラは太りすぎていてドレスが着れずダイエットを決めるのだった。また、そのサラの息子ハリーは親友のタイロンと手に入れた麻薬を薄めて転売し大金持ちになろる計画を建てる。


感想(ネタバレ有):
先日に続き、感想を一言で表すなら、
『心が砕けるくらい苦しい映画』
それでは詳しく書こう。


大きく分けると二つの物語で構成されている。
TV番組の為にダイエットするサラが痩せ薬に依存し暴飲して精神を壊していく過程と、息子のハリーが麻薬に依存していく話である。(ハリーの彼女と親友のタイロンの話もあり、この4人の夢の壊れていく様が映し出されるので、題名が「レクイエム・フォー(「for」と4人の「four」を掛けている)・ドリーム」、直訳すると「夢の鎮魂歌」になっている。)


シナリオ・演出・音楽ともに精神に語りかけるシーンが多く、軽い気持ちで視聴しちゃったので、今の私はゾンビと見紛うほど身体共に弱りきっています。
イギリスの雑誌で『落ち込む映画ランキング1位』を獲ったらしいですが、それは獲るだろ。順当だろ。と鑑賞後の私なら言えます。
いろいろ語りたいシーンはありますが、私はあのハリーが新しいTVを買った事を母親に伝えに家に戻り久々に親子で会話したシーンが印象的でしたね。息子は母親が痩せ薬を飲んでいる事を知って激怒して「あんなの麻薬と同じだから、かあさんを薬中にしたくない」と言うシーン。そんな正論をいうハリーは麻薬に溺れていて。母親のサラは薬に溺れているのではなくて、ダイエットをして赤いドレスを着てTVに出れば家族が戻ってくると勝手な妄想して息子の為に頑張っている。(結局はサラも薬に溺れてしまいましたが)
その親子のすれ違うシーンがなんか良かった。良かったというと変態っぽいですが、印象に残りましたわ。その後に特典映像でサラを演じたエレン・バースティンが「サラを演じた時に、サラがTVを消して一言『寂しい』と言えば彼女の人生は変わっていたと思うの」と答えたシーンと重なり、あの時にあの親子が歩み寄っていれば、表面上の問題ではなくその問題が起きた根源(孤独)を見詰め合う事が出来たのなら、とちょっと悔やみました。


また特典映像の対談で、原作者のヒューバート・セルビー・ジュニアは、10歳の頃に「世界の痛みを消したい」と願い、作家になって「世界の闇を知っている事の方が光を知っている事よりも作家に向いていた。僕は答えを出せないが、問題提議は出来た」と言っている。
「暗い話は嫌い」なんて言わないで、覚悟して、観終わった後に抱き締められるぬいぐるみと恋人へのホットラインを用意してご覧いただきたい。
恋人がいないなら家族へ電話しろ。
家族もいなかったら、行きつけの飯屋で飯を食え。

レクイエム・フォー・ドリーム [DVD]

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