監督失格

あらすじ:2005年に亡くなった林由美香の仕事仲間で恋人でもあった平野勝之が、彼女を失ったことで絶望の淵に立たされ、そこから再生するまでを描く(wikipediaより)


感想(ネタバレ有):
この映画の監督であり実質的な主人公の平野勝之が、元恋人で仕事仲間のAV女優林由美香との東京から北海道までの自転車旅から、彼女の唐突な死とその後を描いたドキュメンタリー。
方々で評判が良くて、そこまで評判がいいのならと軽い気持ちで借りてみたら心を砕かれそうになった。
前半のロードムービーによって監督と彼女の関係を知り、彼女の無知というよりも無垢な態度に、そりゃ周りに人が集まるはずで監督が好くのも分かると思っていたら、35歳の誕生日のシーンに行く。
私は不勉強で、監督の作品は一本も観た事がなく彼女の出演作品も観た事がなかったので、その彼女の死という衝撃と其処に映し出される生々しい母親の叫びと嘆きに心臓を鷲掴みにされたような気持ちになった。
その後の監督と母親。2010年になった母親の黒目が気持ち大きくみえて、それが気のせいなのかメガネの度が変わったのか病気なのか知らないが、5年前とは別人のように観えて怖かった。その母親から「あなたには由美香が張り付いているみたい」と言われた監督は、「亡くなった由美香に張り付いていた(依存していた)のは俺の方だ」と深夜の街を自転車を走らせて思いの丈を絶叫して終わる。


私は礼儀知らずで言葉を知らない馬鹿なので酷い事を書く。
この映画は悪い映画ではないが、方々が絶賛するほどの映画なのかは首を傾げる。
前半や彼女の死までは分かるのだが、終盤の監督のカタルシスの解放にドラマ臭さが強い。
監督や彼女の作品を知る人達は感情移入できたのかもしれないが、何も知らない私はその二人の関係を1時間弱で説明されたくらいの状態で彼女の死に遭遇したので、その後の監督の行動は、母親にインタビューする事と自転車で深夜走り回って叫ぶ事よりも、彼女を喪失した5年間の生活や葛藤を映して欲しかった。それは彼女との北海道旅の後にスランプに陥っていろいろしていた時のような、あの行き場の無い感情の溢れたシーンが観たかった。後は触れていないけど、監督は結婚していたらしいので、奥さん側の話が無かったのも不満だ。(拒否られたなら、拒否られた話を入れればいいのに)
5年間カメラを回せなかったのだから仕方ないだろうと、突っ込みを入れられそうだが、そのような場面無しで、深夜に自転車で走り回れても私は不満だった。
それら総じて、『監督失格』と銘打つのならばソレはソレでいい。
この映画は、弔辞であり大勢に拍手されるものではないから。

監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

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余談。
そもそも、出演者の悲しみには面識の無い私は一生手が届かないだろう…。