I KILL GIANTS

あらすじ:
『“巨人”を倒す…私の世界を守るため。』

「私は、選ばれし“巨人”殺し」…来るべき巨人襲来の為に自分の殻に閉じこもっていたバーバラ。同じ学校に通うソフィアはそんな彼女に手を差し伸べ、束の間二人のあいだに友情が芽生えた。しかしそれでも、孤立を深めてゆくバーバラ…。
ソフィアとも仲違いし、絶望の淵にたったバーバラの前に、ついに“巨人”が現れる。彼女が立ち向かうべき“巨人”、
その正体とはいったい…?
2008〜2009年に全米で刊行され話題となり、外務省主催・第5回国際漫画賞では最優秀賞受賞を獲得(2012年)、待望の邦訳版刊行!
(公式より一部改訂)


感想:
中二病という言葉は、去年辺りから俄かに再燃し。人生の汚点という意味合いだった中二病が、一個性というかカッコイイ意味合いになって幾星霜。
そもそも中二病とは、精神的身長の詐称というかPAD詐欺というか、現状からの逃避なのでカッコイイ訳が無い。
そう、中二病は恥ずかしいカッコ悪いモノなのだ。

そして本の感想に移る。
序盤から部屋の隅に隠れて謎の呪文を唱えながら、巨人を倒す為の武器を作り上げているバーバラ。そしてクラスの真ん中で「私は巨人を見つけ巨人を狩り巨人を殺すもの!」と叫ぶシーンでは、なんだこの涼宮ハルヒは…。とドギマギして。その後の巨人への罠作りや人間付き合いの下手糞さからバーバラってのは生粋の中二病なんだろうなーと読みふけり、ソフィアやモル先生の登場によってバーバラの氷のような心は文字通りに氷解していき、このままバーバラは中二病をやめて普通の女の子になって終わりかと思っていたら、
ソフィアと仲違いしていじめっこのイジメが過熱していって追い込まれるバーバラ。彼女の心の軋みと比例するように世界には小人や化け物が溢れ、バーバラが恐れる部屋を見てしまったソフィアの逃走。部屋から飛び出る手足を磔にされたような黒い女性。
盛り上がってきたけど、コレってどう纏まるんだ?
と思ったらモル先生からの衝撃の事実!うわぁー巨人ってそうゆう意味だったのか。そりゃ倒せないわと思ったら。本当に巨人が現われて、バーバラが頑なに中身を隠していたポシェットからは巨大な戦槌「コベレンスキー」が飛び出る。
こりゃ面白い。問題を妄想で片付けずに直視させるのかとワクワクがドキドキしているうちに巨人から「私を倒してもお前の願いは叶わない」と言われて、そこで現実に戻すのか!ジャンル切り替えすげー。彼女は消えて世界は現実に戻る。残された人間達は彼女の行方を憂い悲しむ。彼女は再来と共に現実と直視する。
彼女の妄想と現実の切り替えというか混ぜ具合いがとても面白い。
カッコ悪く逃げ続けたバーバラが向かい合い乗り越え「思っているよりも私達はずっと強い」と囁くシーンでは感無量となった。

I KILL GIANTS (IKKI COMIX)

I KILL GIANTS (IKKI COMIX)

悪い点。
アメコミなので、世界観が日本とかなり違うので戸惑う。
コマワリや吹き出しが独特で読みづらい点がある。
840円なのでアメコミとしては破格の安さだがコミックとしてはちょい高い。
序盤のノリが伏線が多くて盛り上がりに欠ける。

余談1.
全6話くらいでアニメ化したらかなり映える作品だと思う。物語の跳躍が漫画で補えてない部分が多いし。

余談2.
ネガティブハッピーチェーンソーエッヂから主人公の山本を抜いて、雪崎サイドオンリーで描いた作品というとバシッと同意が得られると思う。
現代の風潮は、男主人公にするならホモ。女主人公にするなら百合という流れだからな。
つまりは滝本竜彦さんはECHOを単行本で出してくれ。

余談3.
海外のアニメファンは「巨大な戦斧を子供が振り回すなんてナンセンスだぜ!」と言っていたが、やっとわかってくれたようだな。