相棒シリーズ X DAY

あらすじ:『相棒 米沢守の事件簿』に続く第二弾相棒シリーズスピンオフ企画。
燃える紙幣の中でとある銀行員が死んだ。現場に駆けつけた警視庁捜査一課刑事の伊丹憲一
。彼を追うように違法アクセス容疑から現場に辿り着いた専門技官・岩月彬。二人の男はいがみ合いながらも事件の真相に挑むのだが、そこには彼らの予想だにしない政府の暗闇が隠れてきた。


感想:
劇場版相棒は、全部観ているが、第一作は劇場版らしい東京マラソンを舞台にした大掛かりで派手な映画であったが第二弾がストーリーこそ相棒にとって重要な分岐点ではあったが、一つのビルを舞台にしていた為に場面転換が少なくアクション要素もなったので少し消化不良であった。劇場版なのだからTVSPでは観る事が出来ないスケールの大きさが欲しかった。
劇場版相棒と並行するように製作されるのが、相棒シリーズの名脇役を主役に据えたスピンオフ企画である。第一弾は、高度な鑑識眼とキャラクター性からファンに好かれている鑑識米沢守を主役にした。劇場版相棒第一弾で特命係が奮闘していた裏側で巻き起こった事件を鑑識の米沢守が解く。というのがスピンオフ企画第一弾『鑑識・米沢守の事件簿』であった。映画の予告にも特命係の二人が登場する事により、観客は特命係の二人と鑑識米沢の三人が主役になるのだと思い映画館に駆け込んだから、タイトル通り米沢が主役で特命係の二人はチョイ役だったという、分かっていたがなんともモニョる映画であった。内容も米沢の過去と人情劇がテーマになっており相棒のスリリングで壮大な装いは一風変わっていた。
そして、相棒スピンオフ企画第二弾。第一弾のタイトルでさえ「米沢?米沢って誰?あー、あの鑑識の人ね」と方々で言われていたので、第二弾ではキャストの名前を伏せて「相棒シリーズ XDAY」と濁らせた。ちなみに主役はファンからは愛称を込めて「イタミン」と呼ばれている自由に行動できる特命係に嫉妬する役柄で有名な捜一トリオの一人「伊丹憲一」である。(捜一トリオ三人で事件に挑んだ方が楽しかったような気がするが)
脚本はいつもの櫻井武晴さんである。初期より相棒のシナリオに携わっていた方で、相棒シリーズの中でも屈指の欝回である「ボーダーライン」を書いた方なので、今作もシナリオ自体は壮大でシリアスなモノとなっている。
舞台設定は、相棒にて神戸が特命から去った後になっている為、亀山や甲斐の登場は無く、神戸は登場するものの右京との絡みは無い。ちなみに右京はイギリス旅行中ということで安楽椅子探偵として役割を行う。
監督は橋本一。「探偵はBARにいる」や「ゴンゾウ」「相棒(2‐5.7-11)」などの監督経験のあるベテランである。

感想としていえば、米沢守や劇場版相棒2よりは社会派サスペンスの体をなしていて面白かった。サイバー犯罪をテーマに取ると本広克行のように某匿名掲示板の人間や社会に不満を持った人間を槍玉にあげる手法がドラマではよく観られるが、そのような描写は無く。どちらかというと映画をご覧になる観客の年齢を考慮したのかコンピュータやインターネットに対する高度な説明はなかった。出てくるのはユーチューブとipadくらい。
キャストはTVシリーズの相棒のレギュラーが脇を固めているので演技のレベルで見苦しい問題は無かった。伊丹が必死に車道を走るシーンは年齢的な意味で見苦しさはあったが。伊丹が亀山のような性格なので所々に天然のボケをかますのも堅苦しいシリアスの合間に観客の緊張をほぐす良いアクセントであったと思う。また伊丹の相棒となる岩月彬も右京のような完璧超人ではなくあくまでコンピューターの専門家であり若者というポジションなのも良かったと思う。
悪い点もある。
前作を踏襲するように右京の出番は少なく事件の規模からすれば彼ならば飛んできそうな事件であったがソレも無かった。
また事件自体の完全なる解決は無い。その為に少し消化不良になる。

総じて、普通に面白い映画であった。
相棒ファンならば特に不満が出る事は無いだろう。
相棒ファンで無い方は違う作品を観た方が良かろう。
この映画がTVシリーズの展開に何か及ぼす事は無いだろうからそれは安心して欲しい。

予告編↓