サイレントヒル:リベレーション3D

あらすじ:幼い頃の記憶が無いヘザーは悪夢の中で「サイレントヒルにこい」と呼ばれ目を覚ます。帰宅すると父の姿が消え壁に描かれた「サイレントヒルにこい」の文字に、彼女は霧と灰の街サイレントヒルに向かうのだった。
↓予告編


感想:
ゲームのサイレントヒルは4しかやったことがないので原作ゲームとの比較は出来なかった。ただ単純にホラー映画としての感想を記す。
全体の内容的には、前作の「サイレントヒル」の続きとなっていて、前作を見忘れているとなんのこっちゃいとなりそうな内容である。続編であるが製作スタッフが一新され、サイレントヒル3Dは映画版バイオハザードスタッフが製作しているのでストーリーは繋がっているが、味付けは大きく変わっている。また3Dの吹き替え版では「浪川大輔」「田中敦子」「大塚芳忠」「釘宮理恵」と有名声優さんが吹き替えを演じているので、声優ファンはお得である。私は2Dの字幕見たけど。
前作のサイレントヒルの醍醐味というのが、個人的には『「日常」と「非日常」の切り替え』だと思った。何気ない場所でもサイレンの音と共に壁や床が薄皮を剥くように剥がれ落ちていき(正確には剥がれあがっていくだが)、日常の後ろに隠れていた非日常(闇の世界)が主人公らの前に現われる。ようは突然今いた場所がお化け屋敷になると言う事だ。その不条理な違和感。突然襲われる恐怖というのが実に恐ろしく思えた。これが他のホラー映画と違うサイレントヒル独特の恐怖であり。それは日常に潜む恐怖の表現(静のホラー表現)を得意とした邦画ホラーに通じるものがあった。闇の世界では主人公らは闖入者であり、全くの無力である。出来る事は逃げ続ける事だけ。逃げ続け、力尽き闇の住人に捕まるという瞬間で、またサイレンが鳴り響き剥がれ落ちた日常が再生して主人公らは日常に戻される。闇の世界に落とす時も日常に戻す時も突然行われるというのが実に理不尽で観る者の心拍を高めた。そこが魅力であった。
では、このサイレントヒル3Dはどうだったか。ぶっちゃけその恐怖を一ミリも分かっていないようで、日常と闇の世界との入れ替わりがあまりなく(2回くらい)。序盤では主人公へザーは度重なる引越しと父の挙動不審から人間不信に陥り、麻薬中毒者のような幻覚を見る。それは、ハンバーガーを食べている子供たち人肉を食べているように見えたり、目の前の人間がのっぺらぼうのようなモンスターに見えてしまうという幻覚のなのだが、それが凄く薄っぺらい。それはサイレントヒルの恐怖表現として酷く間違っている。散々書くが、サイレントヒルの恐怖は「日常と非日常の転換」なのだ。子供たちが人肉バーガーを食おうが、のっぺらぼうのモンスターが出ようが、その後ろの背景(世界)が日常では何の意味も無いのだ。そうゆう中途半端な恐怖表現は観る者に恐怖よりも不快しか与えない。そのシーンは序盤なので、私は「あれ?間違えた?」と変なにおいを感じたが、サイレントヒルにステージが変わればきっと落ち着くだろうと思っていた。しかし、主人公らがサイレントヒルに舞い戻ってば、即座に主人公は闇の世界に落ちそれからずっと闇の世界がステージになった。私は思った。「おいおい、主人公とモンスターの戦いが見たい訳じゃないぞ。この糞スタッフ、バイオだと思って作ってやがる」。その後、いろいろあったが、モンスターのCGには凄味を覚える事はあっても、ただのアクションホラー映画と成り下がってしまったサイレントヒル3Dは、アクションを交えてとんとん拍子に話が進み、綺麗に終わった。
当初、予想していた通り、サイレントヒルの看板を付けたバイオハザードであった。
1時間50分くらいなので、暇つぶしくらいになら役立つが。前作の出来から期待して行くと酷くどうしようもない作品である。