冷たい熱帯魚

あらすじ:片田舎で熱帯魚店を営む社本信行は、娘の万引きの仲裁を買って出てくれた村田と知り合う。社本と同じように熱帯魚点を経営していた村田と社本は意気投合する。親切で気さくな村田の言動に流されるまま社本は村田の店に娘の住み込みバイトを決める。ある日、一匹1千万の熱帯魚の商談の席に呼ばれた社本は、村田の本性を知り、犯罪と暴力の渦へと落ちていく。

予告編↓

感想(ネタバレあり):
糞田舎に住んでいるので、都会のようなアバンギャルドな出来事は少なく。あるとしたら、痴呆のおばさんが深夜徘徊のすえに家の前で倒れていたりするくらいの平穏な町なので。衝撃的事件や衝撃的な出来事にどうしても憧れてしまう私です。そのせいか、TVやネットでも「謎の未解決事件」とか「世界が驚いた残忍すぎる殺人鬼!」とかテロップが踊るとついついチャンネルを合わせてしまうの性で。去年辺りにネット放送で雑誌記者が集まって記者人生上怖かった事件を紹介するという内容の放送があり、いろいろな怪事件から残酷な事件まで紹介されたのですが。その中、で埼玉愛犬家連続殺人事件の話が出ていて。埼玉愛犬家殺人事件をベースにした映画があると知り、評判の良さ(出来の良さから、内容のグロさまで)で躊躇しながら、ここまで観ずにいたが意を決してレンタル。鑑賞後、当たり前のように絶望に堕ちた。


最初のシーンで、社本の妻がさとうのご飯と冷凍食品をテーブルに並べるシーンから、「この映画、ちょっとヤバイ」と産毛が立つような先の恐ろしさを感じた。でんでんが演じる村田の登場は、社本の娘がスーパーで万引きを犯した時に店長と社本の間に入り込み、田舎の成金社長のような豪快で強引で親切なおっさんとして現れる。人の良い村田に言われるがまま行動する社本。
村田が商談の場で相手の吉田を毒殺するシーンで「あれ?」と世界が一変した瞬間に戸惑い、人の良かった村田の豹変や痴女みたいな奥さんの変貌に心がざわつく。その後は社本と私は村田が吐き出す暴力の濁流に流れるまま酷い酷い世界へと落ちていった。山小屋で死体を解体するシーンになるたびに私はDVDの再生を止め、気持ちを落ち着かせる必要があった。グロが辛いのではなく、人を解体するシーンのたびに社本が人ならざるものへの階段を下りていく姿に心を痛めたのだった。中盤を過ぎ、村田がいい気になってヤクザを殺して社本に「殴って来い」とファイトクラブみたいな事をさせていたシーンでは社本も私も頭がおかしくなっていて、社本のボールペンによる反撃が妙に面白く、その後の村田妻と社本が村田の内臓と血にまみれて争う姿では笑いをこらえきれずになってしまった。終盤はコントそのものに見えたのだ。全てをやり直そうと妻と娘で飯を食う姿も、「人生ってのは痛いんだよ」という叫びもシュールだった。


でんでんと吹越満と黒沢さすかの演技が実に良かった。特にでんでん。(神楽坂恵はおっぱいがいい)
実際の事件をベースにしている為にリアリティがあるシーンが多く、(入浴剤とか醤油とか)犯人が使っていた『ボディを透明にする』というインパクトや。「人は絶対死ぬよな。人はある日突然死ぬ。これはどうにもならない。普通はだ。人は絶対死ぬだろう?いつ死ぬかなんて、誰にも分からない。って思われてるけどな。いつ死ぬかわかる人間もいる。俺がそうだよ!!俺は誰がいつ死ぬか、いつまで生きるか、ちゃんと知ってんだ!どこでくたばってもらうか、それを決めるのは、俺だぁ!!!」や「お前の言う地球は青くて丸くてツルツルした星の事だろ。俺のは違う。俺の地球はゴツゴツしたただの岩だ!丸くてツルツルした星なんてねーんだよ」「どうせ、お前も悪人だろ。おまえみたいな善人面した奴一番嫌いだよ」なんかは社本の心の闇を見事にえぐり、観客の心を鷲づかみにする名言になっている。


観なくても生きていけるから見る必要の無い映画だけど。
この映画は世界中が見て「うわーーー」ってなって欲しい。
そんで、でんでんの仕事が増えて欲しい。


余談。
ヒースレジャー亡き後のジョーカーはでんでんにやらせるべきだ。