劇場版SPEC 〜結(クローズ)〜 漸(ゼン)ノ篇

あらすじ:
SPECホルダーと呼ばれる超能力者の対策を専門とした未詳事件特別対策係、通称“未詳”。時間停止能力を持つ一十一や記憶改竄能力を持つ地居聖を倒すが。SPECホルダー達は自分達こそ人類の上に立つ存在だと自己の主張を始める。それに呼応する形で人類側の影の組織はSPECホルダーを根絶やしにする「シンプルプラン」の発動を決める。人類対SPECホルダーの戦いが始まろうとしていた。(ここまでが天)
カラスが飛び交う東京。
謎の白服の男セカイと潤は世界の終わりを前に戸惑い抗う人類を嘲け笑う。
シンプルプランの発動によって世界各地でSPECホルダーが抹殺され始める。それを知った野々村は当麻や瀬文を置いて一人日本に輸入されるシンプルプランの奪取を試みる。


感想(ストーリーのネタバレ無しで):
天の続きから始まるので、TVシリーズから天までを見ておかないと付いていけないので注意。(ざーと説明するけど「あらすじ」というよりも「復習」くらいのざーっとさなので)
SPEC結は、製作当初は1作品だったけど製作していく中でどんどん話が長くなっていったので前後編に変更された経緯があるのだが。それが如実に分かるラストなのでご注目していただきたい。映画を観てきた誰もが「え?」って言ってしまう終わり方なのでふざけていて面白い。
「漸ノ篇」を観ると、続きが絶対に観たくなるので、急いで行くと後編が始まるまで待つ時間が長くその分モヤモヤする。




感想(ネタバレ):
前評判では「SPECの集大成!」「最後だからいろんな人が出ちゃうよ!!」と謳い文句が飛んでいたが、前編ではニノマエとか津田は出てこないし、過去に出てきたSPECホルダーの冷泉とかサトリとかも全然出てこない。(後編のPVでSPECホルダーが並んでセカイの前に立つシーンがあった気がするので底がみものかな)ので、そこらを期待していたのでちょっと肩透かし。
セカイと潤がカラスが舞う警視庁の上で空を見るシーン、カラスの群れの中に三つ足の八咫烏が混ざっていたのが憎い演出。
瀬文の超回復力が本作でも存分に現されていて、足の脛の肉が剥がれて骨が見えている状況で立ち上がって次のシーンでは普通に歩いている姿は「コイツ本当にただの人間かよ…」と呆気にとられる。
餃子ロボはちゃんと登場する。餃子ロボがロボになった経緯がまさか保険金殺人の末路なんて…。叩くと直る。
さんばか刑事も登場する。ノリノリ。
本作は個人的には物語の広げ方が強引で、突如当麻の親父の同僚が現れたり、当麻の先輩が現れたりと新キャラの登場の仕方にはいささか不満が残る。敵の登場し方は、ヒミコであれ城旭斎浄海であれ好き。幽霊みたいな奴は実体があのスライムだったのか、憑依能力だったのか。
幽霊みたいな奴といえば、乗り移られた当麻の祖母が亡くなるとは。未だに制御できない当麻の能力。チートすぎる能力は製作者側の意図によって封印やデメリットが付けられるが、一回くらい観たかったなぁー。ニノマエの能力を「ザ・ワールド」とすると、当麻の能力って死んだ仲の良いSPECホルダーを呼び出す能力じゃなくて、地球の過去の出来事を掘り起こす「アンダーワールド」ぽくなっている。
SPEC結前編の主人公と言えば、完璧に野々村光太郎。
ケイゾクの頃から訳の分からない事件を担当し、一癖二癖もある部下を纏めてきた苦労人。
SPECホルダーだけを殺すウイルス「シンプルプラン」を奪取しワクチン製作をする為に一人組織に挑む姿。当麻や瀬文に「ダメモト。人は計算や経験でダメだと分かっていても何故挑むのか。人は分かっていても諦めきれない思いが物事を動かす」と語る姿は良かった。
某国の諜報員に殺された後に、さらっと登場した時には「おいおい」と突っ込みを入れ掛けて、その後吉川が登場した時には「あれか、幻覚って奴か」と思ったぜ。そんなにポンポン死人が生き返るわけが無い。そして蓋を開けば「吉川は人肌に暖めたお湯を掛け続けたら復活しました」に笑いそうになった。成功理由は「ダメモトでやってみた」なんだろう。フリーズドライから生き返るのはクマムシくらいだろうに。吉川=クマムシ
そして野々村VS幽霊みたいな奴の戦いから野々村の本当の死。
一呼吸置くかと思ったらジョジョの襲来。野々村の死からジョジョ襲来の息もさせない急展開は良かった。
ジョジョの能力が「水を勢いよく飛ばす」能力ぽかったけど、水圧カッターくらいまでやってもらいたかった。研究所で戦うんだけど、あの水芸がコンセントに当たったら感電しそうで怖かったぜ。当麻や瀬文はそこを狙わずに銃撃戦していた。
当麻の手の中で割れたシンプルプランの瓶。SPECホルダーだけを殺すウイルスなので瀬文や吉川には無害だけど。当麻やその現場を隔離せずに野々村課長の葬儀に移ったときには「おい、それでいいのか。割れた瞬間に拡散したから諦めたのか」と突っ込みを入れざるを得ない。その後の後編PVで「アレはフェイク」とか言っていたので、あの瓶の中にウイルスは入っていなかったという流れなんだろう。
葬儀の中で回想には耐えられたが、雅ちゃんの登場でちょっと泣けた。きっと劇後ではこの後に数々の雅ちゃんが駆けつけたのだろう。
THE RiCECOOKERSの『audioletter』が流れて、「ここでスタッフロールが流れて次回予告で終わりか」と感傷に浸っていたら、
「 漸ノ篇 終了」
みたいな文字がドンと出て、後編のPVが流れ始め。「後編のPVの後にスタッフロールなのか珍しい」と思ったら、PVが終わると共に劇場のランプが付く。
みんな「え?これで終わり」というドヨメキのなか劇場を後にする。自分もスタッフロールのない映画なんて初めて見たよ。どの前後編に別れた映画だってスタッフロールはあったのに。なんだこの映画。予想外すぎる終わり方。
本当に一作品を前後編に分断したことが如実に分かった。


本作で分かる事は、ガイア理論の登場やセカイや潤が地球を意思のある存在として表している点から、最終的には人類対地球の意思という戦いなんでしょうよ。
パラレルワールドまで飛び出したので、エヴァまどマギみたいな世界を救ううんぬんじゃなくて、世界を作り変える終わりもありそうで怖い。
兎に角、後編が気になる。