26世紀青年

あらすじ:軍の人間冬眠実験に参加した主人公ジョーは、1年間の冬眠の予定だったが手違いによって500年冬眠させられてしまう。500年後の未来で覚醒したジョーの前に広がっていた未来は、馬鹿だけが生き残り、蛇口からスポーツドリンクが溢れ、企業の宣伝文句に踊らされ、ゴミの山を築く荒廃した未来だった。
予告編↓


感想:
最初のあらすじで、IQの高い夫婦とどっかの大家族みたいなIQの低い夫婦が比較として登場する。
IQの高い夫婦は現在の財政状況や今後の経済の見通しを考えて子作りに適したタイミングを模索する。
逆にIQの低い夫婦は無計画にバンバン子供を生む。IQの低い旦那は隣の奥さんともやって子孫をどんどん増やす。
IQの高い夫婦は、タイミングを探るうちに高齢になり人工授精による妊娠を決めるが、旦那が人工授精用のオナニーをしていた所、テクノブレイクを起こして亡くなってしまう。
逆にIQの低い夫婦はドンドン子供を増やし、子供もIQが低いからドンドンセックスして子孫を増やし拡大の一途を遂げる。
結果、IQの高い夫婦は子供に恵まれず家系図は絶え、IQの低い夫婦はIQの低い子供を産み続け、世界には馬鹿だけが生き残ったのだった。
と、まぁ滅茶苦茶な論理で馬鹿だけの未来がデキタヨーって説明が入る。(コメディだから笑って聞き流せる)
ナレーション「遺伝子化学がこの傾向に歯止めをかけてくれると期待する者もいたが、悲しくも優秀な頭脳と資金はハゲの予防と勃起力の維持に使われたのだった」(人類の未来よりも、金になる産業の研究しか政府と金持ちは見ていなかった。という皮肉)

そんな500年後の未来に来てしまった主人公ジョーは、世界の変容に驚きながらも元の世界に戻ろうと動き出す。
500年後の未来では、荒廃した街に方言とギャル語とスラングが入り混じった汚い言葉遣いをする住人とうろつき、主人公の喋りを「カマくせぇ」と罵る。簡単にいうとみんな不良。
まずは病院に行って、解凍された自分の状態を確認しようとするのだが。病院も馬鹿しかいなかった。
しかし、馬鹿しかいない状況で病院が経営出来るのか、医者が適切な処方を行わないといけない病院を馬鹿がどうやって動かしているのかと思ってみれば。なんてことはない、病院の受付から診断まで全部機械による自動化が施工してあって、馬鹿は患者の姿を見てボタンを押したり、機械の管を口に入れたりするだけの超簡単な作業を行っていた。(誤診とかあっても患者も馬鹿だから気づかない。馬鹿だけの世界)
蛇口をひねるとスポーツドリンクが出てくる。何故スポーツドリンクが出てくるかというと「美味いから。そして電解質が入っているから」。
経済はどん底、文化も廃れ一番人気の映画のタイトルは「ケツ」で内容は90分間ただ映し出されたケツを眺めるだけ。それがオスカーを総なめし、脚本賞も受賞している。美術館では人類の歴史が展示されているが、説明音声はなぜか屁の音が響き渡るだけ。

なんだかんだで不審者として警察に捕まるジョー。
裁判官も検事も弁護士も馬鹿だから、ジョーの喋りがオカマみたいな口調なので笑われて弁護出来ずノリで有罪にされる。
刑務所に連行されるが、看守も馬鹿なので、ジョーの話術に引っかかりジョーは簡単に脱獄する。
(2005年で変な名前扱いされたアップグレイドが2505年では同名が9000人いる話は、キラキラネームの一般化という風刺なんかな)

しかし再び捕まるが、入獄前に行った知能テストの結果によって、馬鹿だけの世界で一般的な知性を持つ主人公は世界一の利口だと分かってしまい内務長官に任命される。
馬鹿の世界の大統領は黒人でマッチョでギャングのボスみたいな格好をした元ポルノスターで馬鹿だった。
閣議もラッパーのライブみたいな証明ギラギラのド派手な会場でガンガンに音楽を鳴らし、議員は大統領の登場にスタンディングして大盛り上がり、演説はもはやマイクパフォーマンス。議員が野次ればマシンガンを打ちまくって黙らす。
大統領は、食糧危機から経済問題まで全てジョーに解決させることを閣議決定する。ジョーは世界一利口だから出来るだろうということで。超利口だから一週間で成功するだろうって。出来なきゃ刑務所に送ると。

作物の不作を解決すべく畑に出向く。
そこでは作物が干からびた茶色い畑が広がっていた。
理由は作物にスポーツ飲料を与えていた為。なぜそんな事をしていたかというと、企業の「植物はブローンド(スポーツ飲料の名前)がだーい好き」の宣伝文句を信じて畑に巻いていた。

ジョー「植物には水が必要だ」
議員A「でも植物はブローンドが好きだって書いてあるし。ブローンドには電解質が入っているんだぜ」
議員B「作物にトイレの水をやれってこと?」
ジョー「トイレじゃなくてもいいけど。それも一つの案だね」
議員A「でも、植物はブローンドが好きだ」
議員B「電解質入りだしね」
ジョー「作物が育たないのはブローンドを与えているからだ。水をやれば育つ」
議員C「でも、トイレから木が生えている所なんて観た事無いぜ」
議員A「確かに。お前天才だな」
ジョー「とにかく、試しに作物に水を与えてみよう」
議員B「作物はブローンドを求めているわ」
議員C「電解質入りだしな」
ジョー「ったく、くどいんだよ! 電解質電解質って言うけど何の事か分かっているんだろうな!?」
議員A「それはブローンドの中に入っているもんさ」
ジョー「だから、何でそれがブローンドの中に入っているんだ!?」
議員C「それは電解質入りだからだろ」
ナレーション「数時間後、ジョーは理屈で攻める事を止めた。そして一言こう言った。『自分は植物と話しが出来る。植物は水を欲している』と。それに全員が納得した」

このくだり大好き。
(企業のマイナスイオンとか良く分からない成分や機能に踊らされる風刺が入っていて、ここら辺から馬鹿だけの世界の怖さが生まれてくる)

ブローンドの変わりに水を巻き始めるが、一週間で効果が出るか分からず。
また人間がブローンドの代わりに水を巻き始めたのでブローンドを作っていた会社は経営が傾き、大量のリストラから景気が低迷。民衆の暴動。(ブローンドの社長がこれまた馬鹿なのも良かった。悪の親玉とかじゃなくてなんとなく世襲制で選ばれたようなダメ社長)
作物の成長は見られず、民衆の暴動によってジョーは更正施設送りにされる。
更正施設ってのは、名前とは大違いの死刑囚と処刑人がデスレースをするTV番組。
ジョーは逃げ惑う自分の姿を笑う民衆に叫ぶ
「僕を撃つなら撃てばいい。轢き殺したいなら轢き殺せばいい。ただ自分の胸に聞いて欲しい。自分達を助けようとした人間を殺すような世界に住みたいかい?」
その言葉すら民衆は笑い飛ばす。(もはや快楽しか見ていない。人の命や人権なんて考えていない…馬鹿だから)
なんだかんだで仲間のチカラによって窮地から脱出したジョーは、功績が認められて副大統領に任命される。
馬鹿だらけの世界でジョーは演説をする。
「みんな本を読め、映画を観て考えろ。クールになって偉大なことをしよう」

馬鹿だけの世界でジョーは、人類に頭が良くなるとか、馬鹿を卒業しようと言うのではなく「前に進もう」と叫ぶのは実に良い終わり方だった。


風刺のよく効いたコメディ映画だった。
これはもっといろんな人が見るべき映画。